プロローグ
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緑の山々に囲まれた湖のあたりに、比較的小さな国が存在した。名はデッペルグ。

湖の中央に大きな島があり、そこに国家の主要機能を備えている。

この国は現在までの歴史を6000まで数える。

かつては、古代デッペルグ王国としてその名を世界につのらせた巨大な王国だった。

しかし、2500年前の出来事により衰退し、今では人口1万4千人からなる小さな国にその姿を変えてしまった。

それでも、この町の中心には、巨大な神殿が存在し、今でも機能していた。

そこは、学校のような形で利用され、古代魔術の研究や国を守る騎士の育成を行っていた。

幼少高と年齢により三段階に分けられ、その課程修了後に、実際に働く僧侶や戦士に見習いという形で就くことになる。

そんな神殿の中に最強と呼ばれる二人の男が存在した。

二人は、何をするにも一緒で、幼い頃からの付き合いだった。寮も昔から同じ部屋だ。

その1人は、ハークという剣士見習いで、剣技を主とした騎士を目指す。

彼は魔術と剣を自在に操り、剣技にはかなり自信がある。時期に騎士として認められる期待の戦士だ。

もう1人は、ジェラル。彼は、剣こそハークに劣るが、かなりの魔術のバリエーションを保有している。

その上にその魔力も膨大で、過去に山脈を平地にするという偉業を成し遂げたこともあった。

彼は、古代魔術研究家の見習いをしているが、彼の性格上一人前になるのはほど遠いともっぱら噂されていた。

古代魔術の研究でかなりの成果を上げているが、神殿内の行いがあきれるほど悪いと言うことで、神官達にめざとく独り立ちを拒まれていた。

主にジェラルのような無法者をおとなしくさせるのを目的として、見習いはパートナーを組まされ二人で修行に励むのだが、彼には通用しないようだ。

ハークは、エリという少しぼうっとしていて、間の抜けた女の子とパートナーを組み、日夜修行に励んでいる。

エリは銃の名手として有名なのだが、騎士道に飛び道具は無用と言うことで、使用は禁止されている。

ジェラルには、ハークの妹ユリアスが、パートナーとしてついている。

ユリアスは、若干16歳で18歳までの課程を修了し、少々若いが見習いとして、ジェラルのパートナーを命ぜられた。

しかし、ジェラルのパートナーで居たら一人前になることが出来ない。そう思った神官が、パートナーを変えようとした。

しかし、ジェラルがそれを拒み神官の部屋を消し飛ばしたため、保留とされている。

そんな彼らは今、ジェラルを筆頭に良からぬ事を検討中である。

「だからな、神殿の奥にある扉の封印を解いてみたいんだ。」

もちろん。他の三人は強引にジェラルに付き合わされている。

「でもな、ジェラル。そんなことをしたら独房行きだぞ」

ハークが、何とかジェラルの悪だくみの阻止を試みる。

しかし、それも事実で、そのようなことをすれば独房に閉じこめられる。運が悪ければそれ以上の罰が与えられる。

二人の会話を聞きながらユリアスが青くなる。

ジェラルとパートナーを組んで以来、幾多のスリルと罰を味わったことか。過去の経験から次の不幸を想像していた。

「でも、おもしろそうだね〜」

エリが相変わらずのマイペースで、ジェラルの話に興味を示した。

「でも、どうやってあそこに行くの?あそこに行くには、大勢の守備を相手にしなければならないんだよ?」

ユリアスがあくまでも消極的に話を進めようとする。

無駄なことだと分かっているのだが・・・。

「眠らす」

ジェラルは一言でそれをかわした。

「でも、守備となると簡単にはいかないんじゃないか?」

そう言うハークに向かって、ジェラルはにかっと微笑む。

「俺は、神殿一の魔術師だぜ。それぐらい何とでもなる」

ジェラルは胸を張って戯れ言を言い放つ。

「じゃあ、決定だね〜」

「おう、夜になったら寮を抜け出すぞ!」

ジェラルの悪巧みは、半ば強制的に決定した。



そして、夜。上手く寮を抜け出した4人は、守備を手際よく眠らせると、封印の掛かった扉へとたどり着いた。

守備は、ジェラルの強力な魔法によって、朝まで目を覚ますことはない。ことによると朝になっても起きないかも知れない。

「この扉だ」

バンと扉を叩いて封印の扉に注目させる。

「で、どうするんだ?」

「こうするんだよ」

そう言ってジェラルは、封印の魔術を打ち消すため、数々の魔術を繰り出した。

「これだ!」

と、言うと直ぐに扉は開いた。

「さすが神殿一の魔術師・・・」

「いま世界一に格上げだ!」

笑顔で戯れ言をほざく。

扉を開くとそこには、一冊の薄汚れた本と巻物があった。

「つまんねーな。これだけかよ」

ジェラルは、そそくさと本と巻物を抱えとっとと部屋を出た。

「もっかい封印するぞぉ」

ジェラルは、言うが早い魔術を繰り出す。

「今度は俺にしか開くことは出来ないぜ」

「またそういう事するんだから・・・」

ユリアスはため息を吐く。

「んじゃもどろうぜ」

ここに来た証拠を隠蔽し、4人は寮に戻った。

そして、寮に戻った4人は、ハーク達の部屋に集まった。

「これは・・・2500年前の出来事について記されているようね・・・」

ユリアスは表紙の文字を指でなぞりながらすらすらと訳し始める。

「ふーん」

ジェラルはつまらなそうに、くるくると巻物を弄ぶ。

それを脇目にユリアスは古文書を開いた。



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