――えーと。
俺は一体何をすれば……。
「早月。ちょっといい?」
「ん……な!? んん……?」
あまりにの出来事に俺は何も考えられなくなった。
紀美は俺に突然目潰しを仕掛けてきた。
そして、反射的に目を閉じた瞬間キスをもって口を封してきた。
「いい? 難しく考え無いで。早月がやらなきゃいけないことは誰にでも出来る事なの」
「誰にでも!?」
これ超難題な気がする。
だってこれが出来たら修行何て必要ないじゃないか。
「必要無いよ。ただ今はこのお店の機能を止めない事を考えて」
機能を止めない。
今俺がやらなければいけないこと。
ケーキは今のところ沢山ある。
なら今はこれを売るだけでいい。
ふと店を見てみると店の外まで人が並んでいる。
これか!
「紀美! 接客を頼む」
「そうそう。その調子で次を考えて」
次は……。
もっと人手が必要だ。
「えーと。マザコンさん? 紀美のフォローにまわって下さい」
「マザコンって言うな!」
「手伝ってくれたら女の子にモテる秘訣を教えたげる」
「何でも言ってくれ。出来る事は何でもやるぜ」
ナイス紀美!
これで暫くは時間が作れる。
一番厄介なのはケーキを作ることだ。
こればかりは見よう見まねでどうにかなるものじゃない。
どうする?
とりあえず食べてみるか。
手近にあったケーキを食べてみた。
途端に俺は絶望に暮れた。
無理だ。
レベルが違いすぎる。
せめてレシピがあれば……。
そうか!
レシピだ。
何処かに必ずあるはずだ。
考えろ……。
もし、自分が世界に通じるケーキ屋になったらレシピはどうする?
レシピは命だ。
そう簡単に見つかるところにあるわけがない。
いや違う。
いつ新しいアイディアが思いついても良いように……。
「ちょっと失礼します」
そう言って俺はお母さんのポケットを探ろうとした。
が、ぴしっと手を払われた。
レディーに向かってあなた何をしているのよ。
そんな目で睨まれた。
「ごめんなさい……」
お母さんは何も言わずにレシピを手渡してくれた。
「有り難うございます!」
やっぱりここにあった。
しかし、一切口を出さないとは言ったけど。
本当に一言も喋らないとは……。
それにすんなりとレシピを渡してくれるとは思わなかった。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
世界に通じるケーキを作らなくては!
2007/07/09(月)