一章.六話
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あれから、一週間が過ぎた。

その間ユリアは、何事も無かった様に振る舞い、また、ジースを止めることもなかった。

少し気にはなったが、コロッセウムに通い続けた。今日もその帰りだ。大分慣れて、大けがをするようなことも無くなった。

そして、彼は既に一財産築いていた。

さすがに命を賭ける戦いだけあって、かなりの金が手に入る。既に国の人間の平均年収程度は貯まっている。

何に使えってんだ、こんなに。

別段、欲しいものがあるわけでなしに、その使い道に困る。

まぁ、欲しい物がなければ無理に使うこともないか。

そんなことを考えながら、街を歩く。と、ガラス越しに、オルゴールが目に入った。

贈り物に最適!と、書かれたPOPが、彼の興味を更に惹く。

あいつに、贈り物なんてしたこと無かったな。あいつは、喜ぶだろうか。

店に入り、そのオールゴールを手に取る。小さな箱。派手な装飾は無い。そのまま、店主に包むよういいつけ、店を出た。

初めての贈り物。恥ずかしさを覚えるが、同時にわくわくしていた。自然と足取りも軽くなる。

いつもより、時間の流れが速く感じるのを感じながら家路についた。



館に着くと、早々にルミウスが護衛を連れてやってきた。相変わらずキラキラと着飾っている。

三人は直ぐに出迎えると、深々と礼をする。

「なかなか、来ないのでこちらから失礼した」

あれから一週間しかたってねえじゃねぇか。

ジースは、聞こえないように言ったつもりだったが、ルミウスに睨まれる。

「で、早速だが、返事を聞きたい」

「私は・・・」

ユリアはそれきり、うつむき何も言わなくなる。

「ユリアはまだ、決心がつかないのです。どうか、お時間を・・・」

「時間は与えた。それで決心がつかないと言うのは、ソレが答えと言うことであろう?」

「それは・・・」

引き下がるヴァルク。それに見かねてジースが吠える。

「お前に、ユリアは渡さない!」

「君に聞いているわけでは無いのだが?」

「俺は、ユリアを渡さない。だから、俺が王になる!」

沈黙。ユリウスは疲れた表情を見せる。

「意味がよくわからないのだが・・・」

「この国は最も優れた魔力を持つ者が王になる。だったら、あんたを倒せば俺が王だ!」

先ほどより、尚疲れた顔を見せるユリウス。

ルミウスは少し考えた。

やけに自信があるようだが、こんな名も知れていないような男が自分にかなうはずもない。

「いいだろう。しかし、私が勝てばユリアを貰い受けるぞ」

ヴァルクに向かって返事を促す。

「・・・ユリアは、それで良いのか?」

ユリアはジースを見つめる。

「ジース・・・」

「心配するなユリア。俺は絶対お前を渡したりしない」

「でも・・・」

「ああ。そうだ、これをお前に渡そうと思ってたんだ」

といって、包みをユリアに手渡す。

「これは?」

「贈り物ってやつだ。いらないならやらん」

やはり照れ臭く、声が裏返える。

「ありがとう」

大事そうにそれを抱きしめるユリア。そして、決心する。

「分かりました、それで、構いません」

そのやりとりを見ていたユリウスは嫉妬を覚え、いらだちをみせる。

「おい、貴様。名をなんと申す」

ジースにを指さす。

「ジースだ」

「ジースよ。必ず貴様を後悔させてやるから覚えておけ!」

ユリウスは、そのまま、背を向け最後に、期日は追って伝えると言い、近衛を連れて去っていった。

それを見送ると、ユリアが口を開いた。

「ジース。私は、あの日あなたが、傷ついて帰って来たときに決めたの。あなたは何を言っても、無茶をする。だったら何も言わないって」

「ユリア・・・」

「私は、ジースを信じているからね」

それだけ言うと、ユリアは自室に戻っていった。



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