大会当日、会場となる決闘場では、準備に慌ただしくなっている。もう何年も決闘が行われたことはないため、かなりの人間が、準備にあたっていた。
しかし、その甲斐もあって、準備は予定より早く終わり、今は最終チェックと観客の入場を待つだけとなっている。
ジース達は、用意された控え室で決闘の時を待っていた。ジースは、緊張のため少し震えている。
ユリアが、その手を握り、少しでも緊張を押さえようとする。
「心配しないで、ジース。あなたは負けたりしない」
「ああ、なんたって、俺は世界一の魔術師だからな」
「見習いだけどな」
「いいじゃないですか、師匠。じゃあ、これに勝ったら認めてくださいよ」
「ああ。認めてやる」
その時扉がノックされ入場が告げられた。
三人は無言で決闘場に向かう。
決闘場には様々な位の者が集まっていた。王宮のものから貴族、国民に至るまで。
とにかく、もの凄い数の観客がそこにいる。
やがて決闘の準備が整い、ジースとルミウスが会場に上がると、観客席との間にシールドが張られた。
国王が審判に合図し、決闘は始まった。
始めに動いたのはジースだった。
ジースは手に光球を出現させ、それをルミウスに投げつける。ルミウスはそれを片手ではじいた。
そのまま、炎の槍を作り出しジースに突撃する。それを警戒しつつ、ジースは右手に炎の球を作り出し、それを両手で構えルミウスの槍を相殺する。
ルミウスが間合いをとるが、ジースは追い打ちとして、右手を振り上げ冷気を出す。ルミウスはそれを全身に受けた。
体中が赤くなり凍傷となるが、直ぐに回復する。
「ちっ・・・」
舌打ちし、ジースは前方に巨大で半透明な壁を出現させ、次の攻撃に備え魔術で自らを加速させる。
ルミウスが七つの火球を持ってその壁を破壊する。
その破壊した壁からジースが現れ、それと同時に光の剣を出現させ、ルミウスを一突きにする。
「ぐ・・・」
だが、戦いは終わらない。
何かがおかしい。
そう思ったやさき、。ルミウスが膨大な魔力を収束させているのに気づく。
「まずい!」
とっさにジースはシールドを張る。
ルミウスの魔力はドラゴンの容姿を取り、ジースに襲いかかる。
召還術。ルミウスの使った魔術は、膨大な魔力を媒体にし、肉体を作り上げ意思を持たせるという高等魔術である。
それも、ルミウスの膨大な魔力で作り出したため、ドラゴンの破壊力も半端でない。
ドラゴンはジースにのしかかるような形で体当たりした。とたん、タイルが砕け飛び、粉塵が立ちこめる。
ルミウスは勝利を確信した。
だが、粉塵の中からルミウスのそれを更に上回るドラゴンが現れる。
「何!」
ルミウスは思わず声を上げる。
次の瞬間、ドラゴンは、ルミウスのドラゴンをかき消し、ルミウスに襲い掛かる。
それをシールドで防ぐが、そのまま吹き飛ばされる。
ルミウスはそのまま意識を失い。やがて終了の合図がなった。