一章.八話
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その夜、城では、ジースの雄志を称え、パーティーが行われていた。

本来、王族の者が一般の国民に負けたとなれば、パーティーなど行えるはずは無いのだが、ルミウスはその性格から、国民や貴族だけでなく王宮内でも評判悪い。

実の父親である王ですら手を焼いていたためパーティーは大勢の王族や貴族が集まり、盛大に行われた。

無論ユリアとヴァルクもその中にいる。

「いやぁ、本当に良かったなユリア。ジースがルミウス王子に勝てて。これで、二人の邪魔をするものはいなくなったな」

「もう。お兄ちゃんたら」

「ふははははは。まさか本当に勝てるとは思ってもみなかったぜ!」

とたん、ヴァルクとユリアの顔が青くなる。

「ジース・・・。お前、それなのにユリアを賭けたのか・・・?」

「ジース・・・」

「冗談だよ。もちろん絶対勝つつもりだったさ。実際、試合が始まってからかなり優勢だったしな。でも、さすがに召還術を使ってきたときは冷や汗かいたぜ。シールドが限界で死ぬところだったぜ」

「・・・まぁ、勝てたのだから何も言うまい。しかし、召還術なんていつの間に身につけたんだ?」

「いやぁ、俺も召還術なんて見たこともなかったんですけど、ルミウスが使うのを見てまねしてみたら、出来た。かなり苦労したけどね」

そこでヴァルクは、改めてジースの才能に驚く。本来召還術とは、王族でも三年以上賭けてようやく取得できる。

無論、ヴァルクも召還術を使うことは出来ない。

それをジースは一回見ただけで覚えたという。

「お前には、本当に驚かされるよ。もう、お前は私を超えてしまったようだな」

「師匠・・・。俺の弟子にしてあげてもいいですよ」

「はっはっは。では師匠。私にも召還術を教えて頂けますか?」

「はっはっは。君には無理だよヴァルク君!」

「ほう・・・」

ヴァルクは、小さな光の剣を作りジースののど元に突きつける。

「ふふふ。何か言ったかい?ジース君」

ヴァルクの短剣がちょっと喉にささり、血が流れる。

しかも、ちょっと焦げ臭い。

「なんでもないっす」

「ふふふ。良かったねジース」

そんな三人に国王が近づいてきた。

三人は、国王に軽く会釈する。

「はっはっは、君はすごいな!次期国王候補のルミウスをいとも簡単に倒してしまうなんて」

「いえ、そんなにかいかぶらないでくださいよ」

「いやいや、君にはもの凄い魔力と才能を感じるよ。どうだい?私に挑戦して王になってみるかい?」

「はははっ、またご冗談を・・・」

「私は本気だよ。ルミウスを倒したことで、君の魔力は公に知れた。それにより君も王になる権利を手にしたんだ」

「えっとぉ・・・」

「まあ、君にその気があればの話だがな」

「ははは、遠慮しておきますよ」

「そうか、まあ楽しんできなさい」

そう言って王はその場から離れた。

「いいのか?ジース」

「俺には、そんな肩書きは似合わない」

「ふふふ。ジースらしいね」

「しかし、出世したなぁ」

人混みの中から一人の男が三人に近づいてきた。手にはナイフを持っている。が、裾に隠れて周りには見えない。

そして、その男はユリアの背後に回り込み、ナイフを根本まで背に突き刺した。

静かに倒れ込むユリアの背中に赤いシミが広がる。

「なっ・・・」

ヴァルクがユリアを抱え込み脈をとるが既に事切れている。

顔を上げるとそこにはルミウスの顔があった。

「ふははははは」

ユリウスは不気味な笑い声を上げる。

「なぜ、俺じゃなくユリアなんだ!」

ジースは、彼自信にも分かるぐらい震えている。

「ふん、貴様を殺しても何にもならん。せいぜい苦しめ!」

「貴様!」

ジースはルミウスにつかみ掛かろうとするが、ヴァルクがそれを制す。

すぐに近衛が駆け寄り、ルミウスを押さえつける。

そして、国王が処分をうながし、ルミウスを連れて行く。

ジースは騒ぎに紛れてユリアをかかえ出口に消えていった。



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