その夜、城では、ジースの雄志を称え、パーティーが行われていた。
本来、王族の者が一般の国民に負けたとなれば、パーティーなど行えるはずは無いのだが、ルミウスはその性格から、国民や貴族だけでなく王宮内でも評判悪い。
実の父親である王ですら手を焼いていたためパーティーは大勢の王族や貴族が集まり、盛大に行われた。
無論ユリアとヴァルクもその中にいる。
「いやぁ、本当に良かったなユリア。ジースがルミウス王子に勝てて。これで、二人の邪魔をするものはいなくなったな」
「もう。お兄ちゃんたら」
「ふははははは。まさか本当に勝てるとは思ってもみなかったぜ!」
とたん、ヴァルクとユリアの顔が青くなる。
「ジース・・・。お前、それなのにユリアを賭けたのか・・・?」
「ジース・・・」
「冗談だよ。もちろん絶対勝つつもりだったさ。実際、試合が始まってからかなり優勢だったしな。でも、さすがに召還術を使ってきたときは冷や汗かいたぜ。シールドが限界で死ぬところだったぜ」
「・・・まぁ、勝てたのだから何も言うまい。しかし、召還術なんていつの間に身につけたんだ?」
「いやぁ、俺も召還術なんて見たこともなかったんですけど、ルミウスが使うのを見てまねしてみたら、出来た。かなり苦労したけどね」
そこでヴァルクは、改めてジースの才能に驚く。本来召還術とは、王族でも三年以上賭けてようやく取得できる。
無論、ヴァルクも召還術を使うことは出来ない。
それをジースは一回見ただけで覚えたという。
「お前には、本当に驚かされるよ。もう、お前は私を超えてしまったようだな」
「師匠・・・。俺の弟子にしてあげてもいいですよ」
「はっはっは。では師匠。私にも召還術を教えて頂けますか?」
「はっはっは。君には無理だよヴァルク君!」
「ほう・・・」
ヴァルクは、小さな光の剣を作りジースののど元に突きつける。
「ふふふ。何か言ったかい?ジース君」
ヴァルクの短剣がちょっと喉にささり、血が流れる。
しかも、ちょっと焦げ臭い。
「なんでもないっす」
「ふふふ。良かったねジース」
そんな三人に国王が近づいてきた。
三人は、国王に軽く会釈する。
「はっはっは、君はすごいな!次期国王候補のルミウスをいとも簡単に倒してしまうなんて」
「いえ、そんなにかいかぶらないでくださいよ」
「いやいや、君にはもの凄い魔力と才能を感じるよ。どうだい?私に挑戦して王になってみるかい?」
「はははっ、またご冗談を・・・」
「私は本気だよ。ルミウスを倒したことで、君の魔力は公に知れた。それにより君も王になる権利を手にしたんだ」
「えっとぉ・・・」
「まあ、君にその気があればの話だがな」
「ははは、遠慮しておきますよ」
「そうか、まあ楽しんできなさい」
そう言って王はその場から離れた。
「いいのか?ジース」
「俺には、そんな肩書きは似合わない」
「ふふふ。ジースらしいね」
「しかし、出世したなぁ」
人混みの中から一人の男が三人に近づいてきた。手にはナイフを持っている。が、裾に隠れて周りには見えない。
そして、その男はユリアの背後に回り込み、ナイフを根本まで背に突き刺した。
静かに倒れ込むユリアの背中に赤いシミが広がる。
「なっ・・・」
ヴァルクがユリアを抱え込み脈をとるが既に事切れている。
顔を上げるとそこにはルミウスの顔があった。
「ふははははは」
ユリウスは不気味な笑い声を上げる。
「なぜ、俺じゃなくユリアなんだ!」
ジースは、彼自信にも分かるぐらい震えている。
「ふん、貴様を殺しても何にもならん。せいぜい苦しめ!」
「貴様!」
ジースはルミウスにつかみ掛かろうとするが、ヴァルクがそれを制す。
すぐに近衛が駆け寄り、ルミウスを押さえつける。
そして、国王が処分をうながし、ルミウスを連れて行く。
ジースは騒ぎに紛れてユリアをかかえ出口に消えていった。