食堂には、大勢人がいた。
昼時ということもあり、かなり混んでいる。
やはり辞めようかなど考えていた時、見知った顔が、ぶんぶんと手を振り、ハークを招く。
彼女はエリ。ハークのパートナーだ。
「ハークゥ〜。こっちこっち一緒に食べよ〜」
「ああ・・・。有り難う」
カウンターでB定食を受け取りエリの元へ。
「ハークが食堂に来るなんて珍しいね?ジェラルやユリアスと喧嘩でもしたの?」
「ん。そうじゃないけど色々あってここで喰うハメになった」
「さっきの、ユリアス愛してる〜で?」
確信犯。
「聞いていたのか?」
「ううん。ここまで聞こえたよ」
ここまで、聞こえたとは愛の力はすさまじい。
「で、その後のふたりは?」
エリが、触れるか否かの所まで顔を近づけて攻め寄る。
「恥ずかしくて見ていられなかったよ」
「ふわぁ〜。じゃあ、二人ともいい感じなんだ?」
「ああ。結婚するらしい」
「ふぇ?」
エリはもの凄く不思議な顔をする。
「まあ、色々なんだよ」
「色々ね・・・。兄としては複雑な心境ですな♪」
「ああ、これからは八倍疲れそうだ」
ジェラルだけでも、厄介ごとが絶えない。それにユリアスが加わったらどうなるのか心配だ。
ユリアスはああ見えて、ジェラルに負けず劣らずのトラベルメーカーだから。
「ねぇ、ハークにはそう言う人いないの?」
「いないよ?何で?」
エリの口元が少しほころぶが、ハークはそれにきづかない。
「聞いてみただけだよ〜。じゃ、あたし先に戻るよ」
なんだかよく分からないが、エリはとっとと行ってしまった。
取りあえず今は、目の前のB定食を頂く事にした。
その夜デッペルグは、400年ぶりの嵐に見舞われていた。
だが、デッペルグはその地理などの関係により、荒らしなどあり得ないはずなのだ。
しかし、デッペルグの歴史には、稀にこういう事が起きる。
こういう時は必ず、不吉なことが起きるのだが・・・。
果たして、この嵐はどの様な不幸を運んで来るのだろうか・・・。
雷と激しい雨音のなか、黒いローブを着た七人の怪しい人間の姿があった。
彼らは、嵐にひるむことなくまっすぐに神殿へ向かっていた
ハーク達は仕事を終え、寮へ戻っていた。
「嵐だ。今日は変なことばかり起こったからな・・・」
ハークは窓の外を見て雨音を聞きながら一言そうつぶやいた。
「何か言ったか?ハーク」
「何でもない」
ジェラルは、困惑するが、直ぐにぼけーっと天井を見つめる。
昼食後からずっとこうだ。
何を言っても直ぐにこんな状況に陥る。
恐らく、恋の病という奴だろう。どんな魔術をもってしても治療は出来ない。
そんなジェラルの反応にため息をついたその時。
ばん!
けたたましい音を立ててドアが開いた。