朝の訪れと共にユリアスは静かに息を引き取った。
「ユリアス・・・?ユリアス!!!」
ジェラルは、ユリアスを強く抱きしめた。
そして、ゆっくりとベッドに寝かせると立ち上がり、そっとその場を後にし医務室を出て行った。
ハークは、その姿をしばらく見ていた。
今は自分に出来ることは何もない。だから、ジェラルを止めなかった。
しかし、しばらくすると急にジェラルの事が気になった。
ジェラルは何故外に出て行ったのだろうか?そんな疑問が頭に浮かぶ。
自分には何も出来ない。しかし、ジェラルなら・・・。
「まさか・・・。あいつ!」
ハークは、ユリアスをそのままにしておくのをためらったが、今はジェラルを追うのが先だ。
ジェラルはきっと、あの魔術を使う。
2500年前。ジースが使ったあの魔術を!
そうなれば、惨劇が繰りかえされる事になる。
なんとしても使わせてはならない。そう考え、ハークは急いで廊下に飛び出した。
急いで部屋に向かう。
ハークが、自分の部屋のドアを開けると、やはりそこにはジェラルの姿があった。
ジェラルの左手にはあの巻物が握られている。
「ジェラル!やめろ!」
ジェラルは振り返った。そこには涙に濡れているにもかかわらず、僅かに微笑む彼の顔があった。
「・・・ジェラル?」
「これでユリアスを甦らせる。俺はどうなろうと構わない!ユリアスの為なら魂を失ったって構わない!」
ジェラルは、そう言うと巻物を掲げる。
「ユリアス・・・。ユリアスに再び生を!」
「ジェラーーール!!」
ハークの呼びかけを無視する。
ハークは、力ずくで止めにかかるが、見えない壁に阻まれて近づく事が出来ない。
「辞めるんだ!ジェラル!」
その声にジェラルは微笑むと、ハークの方へと歩み出す。
そして、ハークのみぞおちに渾身の力をこめて拳を打ち込む。
「ジェ・・ラ・・ル・・」
意識が遠のくほどのダメージに、ハークはみぞおちを押さえ込み床に崩れ落ち、苦しみもがく。
「ハーク・・・。すまない・・・」
ジェラルは一言つぶやき、ハークに背を向けドアに向かって歩き出した。
「ジェラル・・・」
そして、ジェラルは一気に駆けて行った。
診療所で眠るユリアスの元へと。
ジェラルが過ぎ去る様を僅かに残った意識で見届け、そこでハークは気を失った。