二章.十四話
前のページへ  l  トップへ  l  次のページへ

朝の訪れと共にユリアスは静かに息を引き取った。

「ユリアス・・・?ユリアス!!!」

ジェラルは、ユリアスを強く抱きしめた。

そして、ゆっくりとベッドに寝かせると立ち上がり、そっとその場を後にし医務室を出て行った。

ハークは、その姿をしばらく見ていた。

今は自分に出来ることは何もない。だから、ジェラルを止めなかった。

しかし、しばらくすると急にジェラルの事が気になった。

ジェラルは何故外に出て行ったのだろうか?そんな疑問が頭に浮かぶ。

自分には何も出来ない。しかし、ジェラルなら・・・。

「まさか・・・。あいつ!」

ハークは、ユリアスをそのままにしておくのをためらったが、今はジェラルを追うのが先だ。

ジェラルはきっと、あの魔術を使う。

2500年前。ジースが使ったあの魔術を!

そうなれば、惨劇が繰りかえされる事になる。

なんとしても使わせてはならない。そう考え、ハークは急いで廊下に飛び出した。

急いで部屋に向かう。

ハークが、自分の部屋のドアを開けると、やはりそこにはジェラルの姿があった。

ジェラルの左手にはあの巻物が握られている。

「ジェラル!やめろ!」

ジェラルは振り返った。そこには涙に濡れているにもかかわらず、僅かに微笑む彼の顔があった。

「・・・ジェラル?」

「これでユリアスを甦らせる。俺はどうなろうと構わない!ユリアスの為なら魂を失ったって構わない!」

ジェラルは、そう言うと巻物を掲げる。

「ユリアス・・・。ユリアスに再び生を!」

「ジェラーーール!!」

ハークの呼びかけを無視する。

ハークは、力ずくで止めにかかるが、見えない壁に阻まれて近づく事が出来ない。

「辞めるんだ!ジェラル!」

その声にジェラルは微笑むと、ハークの方へと歩み出す。

そして、ハークのみぞおちに渾身の力をこめて拳を打ち込む。

「ジェ・・ラ・・ル・・」

意識が遠のくほどのダメージに、ハークはみぞおちを押さえ込み床に崩れ落ち、苦しみもがく。

「ハーク・・・。すまない・・・」

ジェラルは一言つぶやき、ハークに背を向けドアに向かって歩き出した。

「ジェラル・・・」

そして、ジェラルは一気に駆けて行った。

診療所で眠るユリアスの元へと。

ジェラルが過ぎ去る様を僅かに残った意識で見届け、そこでハークは気を失った。



前のページへ  l  トップへ  l  次のページへ