「本当に何ともないのか?」
医者が驚きの声を上げる。しかし、それも無理はない。
あの後、4人でユリアスが生き返ったことを秘密にすることに決めた。
無論、古代魔術を使用したことがばれれば一大事となるからだ。そもそも、それは、封印された扉から持ち出している。
その為、よく分からないけど良くなったと言うことでシラを通すことにした。
「はい。ほんの少し身体が重いぐらいです」
「ふむぅ。今まで、霧に包まれて助かったものはいないんだが・・・」
医者は何度も首を捻る。奇跡が起きたのだから当然だ。
「まあいい。体調が戻って本当に良かった。もう戻っていい」
「はい。ご迷惑おかけしました」
そう言って、医務室から出る。
外では、三人が待機していた。
「どうだった?」
「心底不思議そうにしてたよ。ちょっと悪いことしたかな?」
「いいっていいって。それより飯にしようぜ」
そう言って、4人は食堂を目指した。
「相変わらず、込んでるな」
「お昼どきだし〜」
「あ、俺席取っておくから。C定食頼む」
ジェラルは、そう言ってそそくさと席を取りに行った。
「ユリアス。お前も先に座ってなさい」
「わかった。私もC定食お願い」
「ああ」
ユリアスを席に座らせてエリと食事を取りに行く。
「いいの〜?二人きりにして目を離すとあり得ない事始めちゃうかもよ〜?」
スマイル100%で、エリが迫る。
事によってもしかすると、既にバカップルぶりを炸裂させているかも知れない。
止めても無駄だろう。ならば好きにさせてやる。
すでに、ハークは諦めていた。
それぞれ、二つづつトレイを持つと二人の所へ戻る。
すると、そこにはよもや目も当てられないバカップルぶりを炸裂させているわけでなしに、二人で顔を赤くしてモジモジしている。
「・・・お前らなにやってんだ?」
ハークはジェラルに、エリはユリアスにトレイを渡す。
「別に・・・」
「いっただっきま〜す」
エリは、我関せず。そそくさとご飯にありつく。
それをみて、ジェラルががつがつとC定食をむさぼる。
「まぁ、いいんだけどな」
そういって、ハークも飯をつつき始める。
「そう言えば、気になることがあるんだが・・・」
「ん?」
「ユリアスは、元に戻ったけど、体内にあった魔力はどうなったんだ?」
ふと、疑問に思ったことをジェラルに訪ねる。
いつもの世界一の魔術師宜しく。俺様講座が始まると思ったのだが、スプーンを口に突っ込んだまま沈黙する。
「どうした?魔力を集める時に体内の魔力も使ったのか?」
「いや・・・。計算に入れていない。使ったとしたら、魔力が余る・・・」
至極真剣な顔をするが、スプーンを口に突っ込んだままなので、迫力に欠ける。
「私・・・。失敗なの?」
会話を聞いている内に徐々に恐怖を覚えたユリアスは小刻みに震える。
「心配するな!俺は世界一の魔術師だ!」
「根拠はなんだよ?」
「うん!信じる!」
「それでいいのかぁ!?」
ハークは、軽く目眩を覚えるが、取りあえず、安心したようなので、これ以上は追求しない。
「ハ〜クぅ。あんまり深く考えちゃダメだよ?」
隣から、エリが顔をのぞき込んでくる。
何かもう、色々とバカらしくなってきたな・・・。
そんなことを思い外を見る。
そこには、昨日の嵐を忘れるほど眩しく陽が照っていた。