二章.十七話
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あれから、平穏な日常が取り戻され、幾日か過ぎた頃。4人はミィーチェに呼び出しを受けて出頭していた。

ミィーチェの部屋♪と書かれた札からは想像も出来ない部屋である。

鞭、ろうそくは、サディストと噂されるぐらいであるから想像の範囲内だ。

そして、拘束具までは、あってもおかしくないかも知れない。

だが、これ使っちゃったら死んじゃうじゃないの?と、おおよそ表現出来ないようなものまである。

そして、ここに来てから終始カタカタと震え続けるジェラル。

きっと、使っちゃったら死んじゃうんじゃないの?で、しごかれたのであろう。

ハークは、入って直ぐにそう確信した。

「よく来た。実はお前らに聞きたいことがある」

その言葉を聞いて、いっそう強くカタカタと震えるジェラル。

「実は、このところ不審者の目撃が相次いでな。お前らなら何か知っているんじゃないかと思ってな」

「不審者、ですか。何か特徴とかは無いんですか?」

「ん。ああ。確かな目撃証言は無いんだが、頭までローブで覆っていて、素早い身のこなし。このぐらいだ。」

「無いですね。ですが、何故我々に?」

「あの夜の前後から目撃されているんだ。特に、あの日外に出ていたユリアスとエリなら何か知っているんじゃないかと思ってな」

ユリアスは、何かないかと思い出そうとするがどうも上手くいかない。

「よく思い出せません」

「まあ、そうだろうな。エリは、見なかったか?」

「あの日は見ませんでしたけど〜、次の日ユリアスが目を覚ましたとき、窓の外に黒い影の様なものを見た気がします。

「ふむ。今まで最も多い目撃証言がそれだ。まあいい」

どうやら、エリの見たものは気のせいでは無かったらしい。

だとすると一体何が?

ハークは、神妙な面持ちになる。

「ミ・・・ミィーチェちゃん・・・俺たちもう帰ってもいいのかな?」

「ん?ああ。構わん。呼び出して悪かったな」

四人は立ち上がりドアへ向かう。

「あ。もう一つあった」

「もう一つですか?」

「ああ。何でも、古くさい古文書と巻物が盗まれたらしい。上の連中が躍起になって調査している」

4人は、揃ってびくっとするが、ミィーチェには気づかれなかったらしい。

「いや、悪い。まだこっちは、よく分からないんだ。もしかしたら、その不審者と関係があるんじゃないかと思ってな」

「はあ・・・」

「帰っていいぞ」

今度こそ、ドアを出る。そして、四人は顔を合わせる。緊急会議だと言わんばかりに、ハーク達の部屋に集まることにした。



直ぐに、部屋に集まった4人だが、揃って青い顔をして俯く。

「いやっはっは。ばれちまったかぁ」

「おい。自称世界一の魔術師。お前の仕事は完璧だったんじゃないのか?」

「いやいやいや。たまにはこういう事もあるって。気にするな。」

「も〜。調子がいいんだから〜」

怒ってるのか、そうでないのか解らないような口調でエリが突っ込む。

「まあ、いいじゃねえか。俺はむしろ影の方が問題だと思う」

「やっぱり、魔物が?」

そう言って、ユリアスは、更に俯きぷるぷると震える。

「解らない。不審者の目撃が、あの夜の前後とミィーチェちゃんは言った。」

「つまり、お前がユリアスを行き返す前から目撃されていた」

「ああ。だがな・・・」

「私達が、あの部屋に忍び込むときに目撃されていたとしたら・・・」

「そう。だから解らない。ユリアスの中にあった魔力も謎の一つだ」

「今立てられる仮説は二つ。一つは、2500年前の様な魔物が現れた」

「も〜ひとつはぁ、本当に不審者が、辺りをうろついている〜」

できれば、後者であって欲しい。四人は心からそう願う。

そして、ジェラルはふと、何か引っかかるものを感じた。

何か、忘れているような気がする。だが、思い出せない。

「考えても仕方がないよ。また、何か起きるか情報が出るまで待とう」

「そうだな」

そこで緊急会議は終了した。

ユリアスとエリが、自分たちの部屋に戻っていった後もジェラルは考え込んでいた。



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