ある日早朝。ジェラルとユリアスは、神殿の北にある図書館にいた。
別段特別な事はない。見習いとして、まだ、世に知られていない魔法を探し、解読、研究。そして整理するのだ。
「さあてジェラル。今日のノルマは30!見つけるまで返さないからな」
「そりゃないぜ、ミィーチェちゃ〜ん」
ちなみに、一流の魔術師でも、一日に2,3見つけられれば奇跡である。
途方もない量のノルマにやる気を失う。
「ほぉ。口答えするか。いい子だ。特別に50にしてやろう」
「ジェラルぅ」
増えたノルマに涙目になるユリアス。
「行くぞユリアス!これ以上ノルマが増える前に!」
そう言って、手近にある本棚に手をふれ魔術を組み立てる。
すると、幾つかの本棚の前に赤い光がうまれる。
これは、ただの目印で、チェック済みの棚とそうで無い棚を見分けるための措置だ。
「うーん。今日はあっちに行ってみようぜ!」
「うん」
適当に光の現れなかった棚を目指す。
「まずはこれからだ」
そう言って、棚の端から一枚巻物を抜き出して、ざっと読む。
だが、目新しい術式は記載されていない。
次に移る。特に目新しいものはない。
次に移る。特に目新しいものはない。
・・・。
おおよそ、ジェラルの性格からは信じられないような光景だ。
しかし、彼の技術は主にこの図書館のものである。
やる気云々よりも、ミィーチェという恐怖から始めたものだが、今は嫌いではない。
「お?これ、新しいぞ。詳しく調べてみてくれ」
「うん。解った」
そう言って巻物を手渡す。
ジェラルは、その魔術のレパートリーの多さから、新しい魔術を探す。
ユリアスは、その新しい魔術を解読すると、担当分けして行っている。
そんな感じで、日々を過ごす。
所変わって、ハークとエリ。
彼らの場合は、ユリアスやジェラルとは違い、騎士団の団長により、既に実務に当てられている。
団長の名は、ドレイク。白髪で、皺も多く見られるが、その肉体は衰えていない。
騎士団の主な仕事は、治安維持の為に町中を巡回することである。
と言っても、これだけ小さな国なので犯罪など、数年に一度起きる程度。
故に、普段はボランティアとして、貢献している。
そして今は、町中のどぶさらいを行っている。
「ハ〜クぅ。騎士ってナンダロウネ」
「ああ。何ナンダロウナ・・・」
嵐の後なので、ドブというドブが全て泥で埋め尽くされている。
その作業量を想像しただけで、2人は現実から逃避する。
「う〜。臭い〜」
「これも修行だ。我慢しろ」
「絶対例の不審者探す方が騎士っぽいって・・・」
「ああ・・・。そうかもな。だがな、俺たちは見習いだから」
言いながらもがしがしとドブをさらう。
「こんな姿で、お昼ご飯食べたくないよう・・・」
あまつさえ、泣き始めるエリ。
確かに食欲はわかないよなあ。まあでも、平和が何よりだ。
そんな感じで、平和な一日だった。