三章.二十話
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夕暮れ。何か手がかりを探すため、今朝蜘蛛の居た場所に四人は集まった。

まだ、春といってもローブ一枚では肌寒い。

「固まって探すよりも手分けして探した方がいいな」

「ああ。俺はユリアスと向こうの方を探してくるぜ」

そういって、返事も聞かずにユリアスの手を取り、そそくさと行ってしまう。

ユリアスとデートだ。ぐらいにしか、あいつは考えていないかも知れない。

ハークは、すーっと息を吸い込み、大きなため息を吐いた。

「エリ、俺たちもいこう」

「は〜い」

何気なくエリの手を取って進む。すると、エリは喜々として歩き出した。

「蜘蛛の死体がいっぱい転がってるね〜」

「ああ。いっぱい、いたからな」

蜘蛛の足を拾ってよく観察する。

生き物とは違う無機質な手触り。指で弾くと高く響く。

生物とは違う何か。足の付け根の部分を良く見てみると、数本の管が出ている。

管の切り口には、細井金属の線が通されていた。

よく分からないな。だが、何か解るかも知れない。そう思いそれを持ち帰ることにする。

「この蜘蛛たちはどこからやって来たのかな?」

「古文書の通りだと自立した意思が魔法でだすんだが・・・」

「魔法?それじゃ、この蜘蛛は、魔術で出来ているの?」

「それはない。もし魔術だったら跡形もなく消えているはずだから」

そう、魔術なら、亡骸が残ることはない。

だとすれば、この蜘蛛は、ジェラルがユリアスを生き返した事によって発生したわけではない。

そっと安堵する。だとすると度々目撃されている不審者が怪しい。

「とりあえずは、ジェラルのせいではないみたいだな」

「ん〜?」

「戻るぞ。もうここに用はない」

そう言って、ジェラル達と別れた所まで戻る。

と、ジェラルとユリアスが抱き合っていた。二人とも頬を紅く染め、眼が潤んでいる。

「ふわ〜。青春だね〜」

その大きな翠の瞳を輝かせ、二人の顔をのぞき込む。

エリに気づき、飛び跳ねるようにして、ジェラルとユリアスは、互いに離れる。

ああ、やっぱりな。そう、ハークは一人納得する。

そして、ふと考える。もし、二人が結婚するような事があれば、俺はジェラルにいさんと呼ばれるのだろうか?

が、バカらしくなり、そこで考えるのをやめた。

「で、何かあったか?」

「いや、さっぱりだ何もない」

「ま〜。ユリアスとずっといちゃちゃしてたんでしょ〜?」

「なっ。そんなことねーよ!」

そんなやりとりをしながら、四人は寮へと戻った。



「なあ、お前はこれどう思う?」

それぞれの部屋に戻ってそうそうに先ほど手に入れた蜘蛛の足をジェラルに見せる。

「どうって、蜘蛛の足だろ?」

「その付け根の所を良く見てくれ」

言われるままにジースは、蜘蛛の足を受け取り、よく観察する。

そして魔術で短剣を作り出し、蜘蛛の足を付け根から縦に切り裂いた。

すると、真ん中に一本細く光沢を放つ骨らしきものが見える。そのまわりを数本の管が、くるくると絡み合っていた。

何やら難しい顔をして、さらに細かく蜘蛛の足を解体し始めた。

「何か解るのか?」

「いや、全然解らない」

バラバラにした蜘蛛の足をハークに返す。

「そうか。だが、これは魔法で作られたわけじゃないよな?」

「ああ。それは確かだ。現に、消滅せずに残ってる」

「なら、お前の術が失敗したわけじゃないようだな」

それを聞いて、ハークを睨み付ける。

「だから何度もいったじゃねーか」

「でも、お前今朝動揺していただろう?」

「知ねーよ」

ジェラルはむっとして、そそくさとベッドに寝そべる。

やれやれ、こいつも大概短気だな。

そのままハークもベッドに入り、眠りに付くことにした。



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