三章.二十二話
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 二度目の襲撃は一度目に比べて小規模だった。

 一日たった今日。ハークはエリを連れて早速調査を始める事にした。

 調査をするといっても何の手がかりもない。

 どうしたものかと考えていると、エリが満面の笑みを浮かべてすたすたと歩き出す。

「どこに行くんだ?」

「蜘蛛がどこからやってきたか調べにいくの〜」

 だから、どこに?そして、探しているのは不審者じゃないのか?

 ハークの心の訴えいざ知らず、エリは先を行く。

 やがて、島と陸を繋ぐ巨大な橋が見えてきた。その橋は石造りで、幅は民家五件分以上ある。

「湖を渡るのか?」

「うん。向こうに渡れば何か解るかも知れないよ」

 よく分からない根拠だが、これといってあてもない。

 だが、二人だけでは危険な予感がする。今日は昨日と違い、鎧を纏ってはいる。

 それでも、もしあの蜘蛛が現れたら危険だ。何せ複数で現れる。

「二人だけじゃ危ないんじゃないか?」

「も〜。ハークは心配性だなあ。大丈夫だよ。なんとかなるなる」

 至極まっとうな意見をしたつもりだが、根拠のない言葉を吐かれ、あまつえ橋を渡り始める。

 ハークは疲労感を覚え、ため息を一つ吐く。

 陸に着くと小さいが、されど活気のある風景が目前に広がる。

「こんにちは〜。お兄さん。ちょっと時間いいですか?」

「はい?」

 エリは、早速通行人をナンパする。もとい、聞き込みの為に声をかける。

 こういうときエリの行動は、恐ろしく早い。

「この辺で何か変わったことはありませんか〜?」

「変わったこと? ああ。島の方では化け物が出て騒ぎになっているみたいだね」

「そうなんですよ〜。それで、何か変わったことはないかな? と思って〜」

「あんた達その化け物について調べているのか?」

「いえいえ。私達が調べているのは、その騒ぎが起きる前に何度か目撃されている不審者です〜」

 うーん。と考え込む男。だが、それらしき人物を見たことも聞いたこともないという。

「そうですか。残念! あ、お兄さん有り難うね」

 それから、数人に話しかけたが、怪しい奴を見た! という情報は得られなかった。

「まあ、一度他の奴が調べているだろうし、こんなもんだろ」

「う〜ん。じゃあ、次に行こうか」

 そう言ってエリは、町の外に向かって歩き出す。

「こんどは、どこにいくんだ?」

「ひっみつ〜」

 ああそうですか。もうどこへでもついて行きますよ……。

 半ば投げやりなき持ちでエリについて行く。

 しばらく歩き続けると、霧が立ちこめてくる。

「おいおい。ここから先は、国境までずっと霧で何も見えないぞ?」

「ううん。これ以上は進まないよ〜。」

「どういう事だ?」 

 意味が分からず聞き返す。

「もし不審者が外の人間だったらこの辺りを通ってくるはずだよね?」

「ああ、だが、外からここに入るには、魔術を使わなければ入ってこれないだろ?」

「じゃあ、こっち側に協力者がいたのかも」

 まあ。考えられないことはないだろう。

 やれやれ、と思いつつ何かないかと探し始める。

 そういえばエリの奴、蜘蛛の情報も集めていたな。

 もしかして、不審者と関係があると思っているのだろうか?

 確かに、蜘蛛の現れる前に不審者が現れた。そう考えてもおかしくない。

「なあエリ。お前は……」

 振り返ると、そこにエリの姿は無かった。

「エリ!?」

 一体どうしたんだ?

 懸命に付近を探すがエリの姿は見あたらない。

「エリ!」

 幾度も叫んでみるが、返事はない。

 ただ、その叫びだけが反響して彼に答えるだけだった。



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