二度目の襲撃は一度目に比べて小規模だった。
一日たった今日。ハークはエリを連れて早速調査を始める事にした。
調査をするといっても何の手がかりもない。
どうしたものかと考えていると、エリが満面の笑みを浮かべてすたすたと歩き出す。
「どこに行くんだ?」
「蜘蛛がどこからやってきたか調べにいくの〜」
だから、どこに?そして、探しているのは不審者じゃないのか?
ハークの心の訴えいざ知らず、エリは先を行く。
やがて、島と陸を繋ぐ巨大な橋が見えてきた。その橋は石造りで、幅は民家五件分以上ある。
「湖を渡るのか?」
「うん。向こうに渡れば何か解るかも知れないよ」
よく分からない根拠だが、これといってあてもない。
だが、二人だけでは危険な予感がする。今日は昨日と違い、鎧を纏ってはいる。
それでも、もしあの蜘蛛が現れたら危険だ。何せ複数で現れる。
「二人だけじゃ危ないんじゃないか?」
「も〜。ハークは心配性だなあ。大丈夫だよ。なんとかなるなる」
至極まっとうな意見をしたつもりだが、根拠のない言葉を吐かれ、あまつえ橋を渡り始める。
ハークは疲労感を覚え、ため息を一つ吐く。
陸に着くと小さいが、されど活気のある風景が目前に広がる。
「こんにちは〜。お兄さん。ちょっと時間いいですか?」
「はい?」
エリは、早速通行人をナンパする。もとい、聞き込みの為に声をかける。
こういうときエリの行動は、恐ろしく早い。
「この辺で何か変わったことはありませんか〜?」
「変わったこと? ああ。島の方では化け物が出て騒ぎになっているみたいだね」
「そうなんですよ〜。それで、何か変わったことはないかな? と思って〜」
「あんた達その化け物について調べているのか?」
「いえいえ。私達が調べているのは、その騒ぎが起きる前に何度か目撃されている不審者です〜」
うーん。と考え込む男。だが、それらしき人物を見たことも聞いたこともないという。
「そうですか。残念! あ、お兄さん有り難うね」
それから、数人に話しかけたが、怪しい奴を見た! という情報は得られなかった。
「まあ、一度他の奴が調べているだろうし、こんなもんだろ」
「う〜ん。じゃあ、次に行こうか」
そう言ってエリは、町の外に向かって歩き出す。
「こんどは、どこにいくんだ?」
「ひっみつ〜」
ああそうですか。もうどこへでもついて行きますよ……。
半ば投げやりなき持ちでエリについて行く。
しばらく歩き続けると、霧が立ちこめてくる。
「おいおい。ここから先は、国境までずっと霧で何も見えないぞ?」
「ううん。これ以上は進まないよ〜。」
「どういう事だ?」
意味が分からず聞き返す。
「もし不審者が外の人間だったらこの辺りを通ってくるはずだよね?」
「ああ、だが、外からここに入るには、魔術を使わなければ入ってこれないだろ?」
「じゃあ、こっち側に協力者がいたのかも」
まあ。考えられないことはないだろう。
やれやれ、と思いつつ何かないかと探し始める。
そういえばエリの奴、蜘蛛の情報も集めていたな。
もしかして、不審者と関係があると思っているのだろうか?
確かに、蜘蛛の現れる前に不審者が現れた。そう考えてもおかしくない。
「なあエリ。お前は……」
振り返ると、そこにエリの姿は無かった。
「エリ!?」
一体どうしたんだ?
懸命に付近を探すがエリの姿は見あたらない。
「エリ!」
幾度も叫んでみるが、返事はない。
ただ、その叫びだけが反響して彼に答えるだけだった。