三章.二十四話
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 その夜。

 しばらくは、ここに居ても構わないと言うことだった。

 ハークは、エーシャの好意に甘え今は夕食を取っている。

 パンとスープという質素なものだが、贅沢は言えない。

「ところで、君名前は?」

「あ。ハークです」

「ハーク君ね。私、凄い君の事に興味あるから色々と教えて欲しいな」

 上目遣いに見つめられドキッとする。

 もしかして、もしかするのか?

「あ、別にそういうのはないよ」

 察したらしい。少し残念だ。

「色々って言われても何から話せばいいか思いつきませんよ」

 彼女は、少し考えるそぶりを見せる。

 ハークと同様に何から聞けばいいのかわからないのだろう。

「うーん。そうだなあ。どんなところに住んでいるの?」

「湖の真ん中に大きな島があってそこに住んでいます」

 湖の上。そう呟いて、エーシャは眼を輝かせる。

 その響きに、あこがれを覚えたのかもしれない。

「ふむふむ。君のお仕事は?」

「騎士。の見習いです」

「あら? 格好いいわね」

「そうですか?」

「うん。肩書きが」

 笑顔でがっかりさせてくれる。

「か……」

「冗談よ」

 どうやら、オモチャにされているらしい。

 それからもかなりの数の質問を投げられうんざりする。

 ふと時計を見ると2時を回っていた。

「ん?もうこんな時間かあ。続きはまた明日にして寝ましょう」

「はい」

 そう言って、2人で先ほどの寝室に向かう。

「って、二人同じ部屋で寝るんですか!?」

「うん。同じベッドで♪」

「同じ!?」

「あれれ。床で寝たいの? 向こうでは床で寝るのが習慣?」

 じゃあ、こっちでは、会って間もない男と寝るのが習慣なんですか。

 なにやらこの人も一癖ありそうだとため息を吐く。

「ほらほら。突っ立ってないでこっちに来なよ」

 既に彼女は布団を被って、おいでおいでと手招きする。

 きっと文化の違いなんだ。

 そう言い聞かせて、そっとベッドにお邪魔する。

「ふふ。こうして、誰かと一緒に寝るなんて何年ぶりかなあ」

「え? この国の人はみんなこうなんじゃないんですか?」

 すっとぼけてみる。

 いいにおいがする。何かつけているのだろうか。

「そんなわけないでしょ。私にはね、大好きな人がいたの」

「いたの?」

「うん。でもね、病気で死んじゃった」

「あ……。ごめんなさい」

「別に謝らなくてもいいよ。もう、昔の話だし」

 彼女の顔は伺えないが、声色が少し震えているのがわかる。

「彼は、私を愛してくれた。私も彼を愛していた」

 今着ているこの服は、その人のものだろうか。

 少し、その服に袖を通したのが悪い気がした。

「その人は……」

 どんな人だったんですか?

 聞こうとして、既に彼女が眠っている事に気が付く。

 やれやれ。

 なんだか寂しい気もしたが、疲れて居たため直ぐに眠りについた。



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