三章.二十七話
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 みつからねぇ。

 もう何時間歩き続けただろうか。足場も悪いとあって、足への負担が大きい。

 また効率の良い探査が出来ず、ただ闇雲に探し回り、ただハークの名を叫んだ。

 喉がかすれ、痛みを覚え、激しくむせる。

 俺はお前と違って体力ねーんだよ。ついでに気も短い。

「ハーク!」

「ジェラル〜。少し休もう。もう、足が痛いよう」

 エリが苦痛を訴える。鎧を身に纏っているせいで、疲労もジェラルやユリアより大きいようだ。

 そろそろ休むか。そう考え、魔術で苔を払いのける。

 そこに三人が充分に座れるスペースが生まれた。

「これだけ探してもいねえってことは、ここには居ないんじゃねーの?」

「ダメだよ諦めちゃ。頑張ってお兄ちゃん探そう」

「お、おう!」

 別に端から諦める気なんてない。そんな事もあるのではと考えただけだ。

 そうジェラルが自分に言い訳をしていると、女の歌声が聞こえてくる。

「人!?」

 何でこんな所に人。それも女が居るんだ。

 とにかくその歌の聞こえる方に向かう。

 ――驚いた。

 濃い霧がいきなり晴れたのだ。

 違う。その一角にだけ霧が存在しないのだ。故に霧を抜けたわけでは無いと悟る。

 目の前には村があった。建物は全て木造で、簡単な作りになっている。

 そして、その一つの庭にあの歌声の女が居た。

「あの〜」

 女は振り向き三人に向かって、丁寧に礼をする。

「初めまして。私はスティアといいます」

 それにならいジェラル達も順に挨拶を交わす。

「あなた達が、ここに来た理由はわかっているの。昨日、霧に迷い込んだ男を捜しているんでしょ?」

「え?」

「あ、勘違いしないでね。彼はここには居ない。いえ、霧の中も居ないの」

 三人は揃って困惑する。

「ああ。ごめんなさい。私は霧を通じて、人を感じることが出来るの」

「えーっと、つまり、その男の人は、もう、霧の中にはいないってことですよね?」

「そう。でも、何処に行ったのかはわからない」

「そうですか……」

 ハークの行方は、わからないままだが、取りあえず霧の中にはいない。

 彼らにとっては、それだけでも充分な収穫だった。

「これからどうするよ? 一度神殿に戻るか?」

「うん。それがいいと思う」

 そうと決まれば直ぐに帰ろう。

 そう考えた矢先に、エリがはっとした顔をして、スティアの元に駆け寄る。

「スティアさん。この霧に誰かが入ればわかるんですよね〜?」

「ええ。動物は無理ですけど、人間なら可能です」

「少し前に、嵐がありましたよね? その前後にこの霧に入った人はいませんでしたか?」

「嵐の前後……。あ! はい。7人の男が、デキタイトの方から、この霧の中に入ってきました」

「ありがとうございます!」

 エリは、満面の笑顔でスティアに頭を下げる。

「いえいえ。お力になれたのなら幸いです……。ところで、先ほどから気になって居たんですけど、その腰に巻き付けた縄は一体なんですか?」

「こうすれば、お互い霧の中でもはぐれる事は無いだろう? 俺が考えたんだぜ」

「はあ。確かにそうですけど、変ですよ。それ」

 「そうか? 俺の英知の結集だぜ?」

 だが、変と言われて俯くユリアとエリだった。



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