みつからねぇ。
もう何時間歩き続けただろうか。足場も悪いとあって、足への負担が大きい。
また効率の良い探査が出来ず、ただ闇雲に探し回り、ただハークの名を叫んだ。
喉がかすれ、痛みを覚え、激しくむせる。
俺はお前と違って体力ねーんだよ。ついでに気も短い。
「ハーク!」
「ジェラル〜。少し休もう。もう、足が痛いよう」
エリが苦痛を訴える。鎧を身に纏っているせいで、疲労もジェラルやユリアより大きいようだ。
そろそろ休むか。そう考え、魔術で苔を払いのける。
そこに三人が充分に座れるスペースが生まれた。
「これだけ探してもいねえってことは、ここには居ないんじゃねーの?」
「ダメだよ諦めちゃ。頑張ってお兄ちゃん探そう」
「お、おう!」
別に端から諦める気なんてない。そんな事もあるのではと考えただけだ。
そうジェラルが自分に言い訳をしていると、女の歌声が聞こえてくる。
「人!?」
何でこんな所に人。それも女が居るんだ。
とにかくその歌の聞こえる方に向かう。
――驚いた。
濃い霧がいきなり晴れたのだ。
違う。その一角にだけ霧が存在しないのだ。故に霧を抜けたわけでは無いと悟る。
目の前には村があった。建物は全て木造で、簡単な作りになっている。
そして、その一つの庭にあの歌声の女が居た。
「あの〜」
女は振り向き三人に向かって、丁寧に礼をする。
「初めまして。私はスティアといいます」
それにならいジェラル達も順に挨拶を交わす。
「あなた達が、ここに来た理由はわかっているの。昨日、霧に迷い込んだ男を捜しているんでしょ?」
「え?」
「あ、勘違いしないでね。彼はここには居ない。いえ、霧の中も居ないの」
三人は揃って困惑する。
「ああ。ごめんなさい。私は霧を通じて、人を感じることが出来るの」
「えーっと、つまり、その男の人は、もう、霧の中にはいないってことですよね?」
「そう。でも、何処に行ったのかはわからない」
「そうですか……」
ハークの行方は、わからないままだが、取りあえず霧の中にはいない。
彼らにとっては、それだけでも充分な収穫だった。
「これからどうするよ? 一度神殿に戻るか?」
「うん。それがいいと思う」
そうと決まれば直ぐに帰ろう。
そう考えた矢先に、エリがはっとした顔をして、スティアの元に駆け寄る。
「スティアさん。この霧に誰かが入ればわかるんですよね〜?」
「ええ。動物は無理ですけど、人間なら可能です」
「少し前に、嵐がありましたよね? その前後にこの霧に入った人はいませんでしたか?」
「嵐の前後……。あ! はい。7人の男が、デキタイトの方から、この霧の中に入ってきました」
「ありがとうございます!」
エリは、満面の笑顔でスティアに頭を下げる。
「いえいえ。お力になれたのなら幸いです……。ところで、先ほどから気になって居たんですけど、その腰に巻き付けた縄は一体なんですか?」
「こうすれば、お互い霧の中でもはぐれる事は無いだろう? 俺が考えたんだぜ」
「はあ。確かにそうですけど、変ですよ。それ」
「そうか? 俺の英知の結集だぜ?」
だが、変と言われて俯くユリアとエリだった。