四章.二十九話
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 俺が目を覚ますと、その横には美女がいた。

 驚きで眠気が綺麗さっぱりに消し飛ぶ。

 だが、次の瞬間昨日のやりとりを思い出してほっとする。

 エーシャの寝顔は魅力的で、つい見入ってしまう。

「ん……」

 それに気づいたのか続いてエーシャも目を覚ます。

「おはよう」

「おはようございます」

 挨拶をすると、のそのそと布団から這い出て部屋から出て行った。

 ぐっと背を伸ばし、することもないしと彼女の後を追う。

 彼女は台所にいた。朝食の支度をしているようだ。

「あら? もう少し横になっていればいいのに」

「いえ、もう十分です」

 椅子に座って、カウンターごしにエーシャをぼーっと見つめる。

 これからどうしよう。しばらくはここに居てもいいと言われたがこれと言ってやることがないし。

 そんな事を考えているとき、ハークは再びあの時のような違和感。

 それは、不安に似た感じで落ち着かなくなる。

 ――嫌な予感がする。

 急いで台所から駆け出す。

「あら? 何処に行くの?」

「ちょっと、外へ行ってきます」

 まさか、ここにもあいつらが……。

 それは、的中した。

 ドアを開けるとわさわさと蜘蛛が町を徘徊しているのが目に入る。

 直ぐにドアを閉め、剣と鎧を身につける。

「どうしたの? そんなに慌てて。それに鎧まで……」

「エーシャさんは中に居てください!」

 そう言って家の外に出る。

 相変わらず多い!

 手近にいた蜘蛛に不意打ちをかけ絶命させる。

 それに気づいた蜘蛛たちが、ハークの方へ次々と押し寄せる。

 一人じゃ無理だって……。

 それでも、果敢に剣を振るう。

 三匹目の蜘蛛をやっとの事で倒したとき、異変が起こる。

 それまで、襲いかかってきた蜘蛛が、ぴたりと攻撃を止め、丁度四匹づつのに別れ始める。

 その内の一つの集団が、ハークに襲いかかってくる。

 一匹目の足を剣で払うと左右から二匹同時に仕掛けてきた。

 おいおいおい。前より頭が良くなってるじゃないか……。

 即座に魔術でシールドを張り、その攻撃を防ぐ。

 一匹いない。どこに……。

 その瞬間背後から蹴り降ろされ前のめりになる。

 後ろかよ!

 鎧を着ているためダメージはない。

 だが、他の蜘蛛はその隙に乗じて攻撃を仕掛けてくる。

 魔術で、結界を張ろうとするが間に合わず、蜘蛛に次々に叩かれる。

 必死で頭を守ることしかできない。

 死ぬ……。

 そう予感したとき、突然蜘蛛の攻撃が止む。

 一体何が?

 そう思い、顔を上げると次々に蜘蛛が、飛ばされていく。

 はっとして、後ろを振り返るとそこには……。



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