その後。
ハーク達は、爺に応接間に案内されそこで、ロジャーが来るのを待っていた。
「でも以外だな。ハーク君が魔術使えるなんて」
「いえ、大したことは出来ません。剣が主体なので……」
興味津々あれできる? これ出来る? と迫られる。
そんなやりとりをしていると、ロジャーが入ってきた。
「やあ。待たせたね」
ロジャーは青ざめた顔でゆっくりと部屋に入ってきた。
先ほどのエーシャの一撃が、かなり堪えているのだろう。
「大丈夫ですか?」
「これぐらい慣れているよ……」
「ハークにさっきの事謝りなさい」
「……」
そっぽを向くロジャー。
恐らく認めたくないのだろう。
だが、エーシャは容赦なく先ほど折れた胸にもう一撃入れようとする。
「申し訳ありませんでした!」
「最初から素直に謝ればいいのに」
そう言って、ぴんっと指でロジャーの胸を弾く。
「っが!」
ロージャーは、苦痛な顔をしてうずくまる。
「ハーク君! 私はエーシャを諦めないからな!」
「諦め無いって言われても最初から何も無いですから」
「……っ。無かったことにしようとしているのか!」
何を言ってもダメな人だ。
ロジャーの性格にふと仲間のことを思い出し頭痛に苛まれる。
俺の周りには良く人の話を聞かない人が集まる……。
「まあいい。うちにしばらく置いて欲しいと言うことだったな?」
「ええ。実は……」
エーシャは、いきさつを説明するとロジャーは少し考えるそぶりを見せる。
それも無理は無いだろう。化け物が村に入り込んできたのだ。
「成る程。事情はわかった。好きにすればいい。セバスチャン。後は頼む」
「かしこまりました。直ぐにお部屋のご用意を」
ロジャーは、そう爺に告げるとスタスタと何処かへ行ってしまった。
「では、お二方こちらへ……」
その場を爺が引継ぎ部屋へと案内された。
夜。ロジャーの計らいによって夕食をとったハークは、セバスチャンに案内された部屋にいた。
今回は、エーシャとは別の部屋だ。
ゲスト用の寝室と言うことだが、見たこともない豪華な部屋だった。
壁には絵画が飾られ、ベッドは重厚のある木製で、その上には派手な模様の布団が乗っている。
てっきりあんな様子だから、屋根裏にでも押し込められると思った……。
早速、用意された着替えに変え明かりを消して布団に潜り込む。
至極柔らかかった。
ハークはそのまま眠りについた。
が、暫くすると何かの気配に気づき目を覚ます。
すると、何者かがドアから侵入してくる所だった。
誰だ?
ハークは気づかれぬよう、そっと息を殺す。
したっ。したっ。
近づいてくる足跡。
それが丁度止まったところで目を開き、侵入者を突き飛ばす。
「きゃっ」
女の悲鳴。
構わず押さえつけ、魔術で明かりを灯す。
「エーシャさん!?」
「ハーク君……。重い」
慌ててエーシャから飛び退くハーク。
「一体どうしてこんな時間に?」
「眠れなかったから……」
どっと緊張感が解ける。
「脅かさないでくださいよ」
「私、そんなつもりじゃ無かったの……」
人のぬくもりが忘れられず、ここに来たらしい。
少しの間だ会話をして、エーシャを部屋に帰し眠りにつく
しかし、再び気配を感じ、苛立ちを覚えながらもそちらを振り向く
するとそこにはエーシャではなく……。