朝になってようやく解ってもらえた。
ハークはそっと胸をなで下ろす。
「でも。ハークに命を狙われる心当たりとかはないでしょう?」
「ありません。国内ならともかく、国外で心当たりなんてありませんよ」
「国外……」
何やら、国外という単語にロジャーは考え込む。
「もしかしたら、魔術の存在を忌み嫌う奴らの仕業かも知れん」
「何ですかそれ?」
「ガートスって呼ばれる宗教だ。魔術なんてものが存在すると困る連中だよ」
成る程、それで襲われたのか。
納得しかけて、疑問が沸く。いつ魔術を見られたのか?
ロジャーと戦っていたときか。若しくは蜘蛛と戦っていたとき。
「うーん。その人達はみんな暗殺集団なんですか?」
「さあ。詳しいことはよくわからないよ。ただ、普段は一般人と同じ生活をしているはずだ」
そこで、ふと自分が何故この国に迷い込んだのかを思い出す。
もしかしたら、その宗教に関係があるのかも知れない。
「宗教なら勧誘とか集まるところがありますよね?」
「あるだろうけど私には解らないよ」
「そうですか……」
ロジャーはそれだけ言うと、少し休むと言うことでその場を後にする。
「あれ? エーシャさんは寝ないんですか?」
「ハーク君一人じゃ心配だから一緒に」
そう言って人のベッドにそそくさと潜り込む。
何か言ってやろうと思ったが、さすがに色々ありすぎてそんな余裕は無かった。
それに彼女がいれば、誰が来ても大丈夫だろう。
そう思い一緒に眠る事にした。
そして、その日の昼方。
ふとトイレに行くために起きてその帰り、いい香りにつられて食堂へと赴く。
そこでは、メイド達が忙しなく働いる。
何かつまみたかったけどそれは無理そうだ。
そう思い引き返そうとすると、何やら爺がこそこそと、スープの中に怪しげな粉末を入れているのを目撃する。
そして、何事も無かったかのよう去っていく。
あれは一体……。
不思議に思い爺の後をこっそりとつける。
すると爺はハークが借りている部屋の前で、そのドアをノックする。
その後ろにそっと近づき、口をふさぎ、部屋の中へ入れる。
「むふぁ! むふぁふぁ!」
「爺さん。さっき一体何を仕込んでいたんだ?」
爺の口を開放する代わりにそののど元に短剣を突きつける。
「……何のことです?」
「しらばっくれるんじゃない。あんたが変な薬を入れているところを見たんだ!」
それを聞くと爺は、素早い身のこなしですっとハークの腕を抜ける。
しまった!
だが、爺はどさりとその場に倒れる。
エーシャが目を覚ましていたのだ。
「毒を盛っていたのね?」
「ああ、恐らく」
取りあえずと、枕カバーで、爺を縛り上げようとしたとき。
ふにっと、爺にはあり得ない感触がハークの手に残る。
「ふに?」
もう一度、触ってみて確認する。
小さいが、確かにこの爺には胸が存在したのだ。
「エーシャ。この爺女だ!」
「はっ!?」
言われてエーシャも爺の胸を揉む。
エーシャは、そのあり得ない感触が気持ち悪かったらしく後ずる。
「この国の男は、歳をとると女装する文化が……」
女装する文化があるのかと言おうとして途中でエーシャに殴られた。
恐る恐る、その顔に手を当て触れてみる。
妙な感触が気になりつねってみると顔が……。
2006/07/27(水)