四章.三十四話
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 朝になってようやく解ってもらえた。

 ハークはそっと胸をなで下ろす。

「でも。ハークに命を狙われる心当たりとかはないでしょう?」

「ありません。国内ならともかく、国外で心当たりなんてありませんよ」

「国外……」

 何やら、国外という単語にロジャーは考え込む。

「もしかしたら、魔術の存在を忌み嫌う奴らの仕業かも知れん」

「何ですかそれ?」

「ガートスって呼ばれる宗教だ。魔術なんてものが存在すると困る連中だよ」

 成る程、それで襲われたのか。

 納得しかけて、疑問が沸く。いつ魔術を見られたのか?

 ロジャーと戦っていたときか。若しくは蜘蛛と戦っていたとき。

「うーん。その人達はみんな暗殺集団なんですか?」

「さあ。詳しいことはよくわからないよ。ただ、普段は一般人と同じ生活をしているはずだ」

 そこで、ふと自分が何故この国に迷い込んだのかを思い出す。

 もしかしたら、その宗教に関係があるのかも知れない。

「宗教なら勧誘とか集まるところがありますよね?」

「あるだろうけど私には解らないよ」

「そうですか……」

 ロジャーはそれだけ言うと、少し休むと言うことでその場を後にする。

「あれ? エーシャさんは寝ないんですか?」

「ハーク君一人じゃ心配だから一緒に」

 そう言って人のベッドにそそくさと潜り込む。

 何か言ってやろうと思ったが、さすがに色々ありすぎてそんな余裕は無かった。

 それに彼女がいれば、誰が来ても大丈夫だろう。

 そう思い一緒に眠る事にした。

 

 そして、その日の昼方。

 ふとトイレに行くために起きてその帰り、いい香りにつられて食堂へと赴く。

 そこでは、メイド達が忙しなく働いる。

 何かつまみたかったけどそれは無理そうだ。

 そう思い引き返そうとすると、何やら爺がこそこそと、スープの中に怪しげな粉末を入れているのを目撃する。

 そして、何事も無かったかのよう去っていく。

 あれは一体……。

 不思議に思い爺の後をこっそりとつける。

 すると爺はハークが借りている部屋の前で、そのドアをノックする。

 その後ろにそっと近づき、口をふさぎ、部屋の中へ入れる。

「むふぁ! むふぁふぁ!」

「爺さん。さっき一体何を仕込んでいたんだ?」

 爺の口を開放する代わりにそののど元に短剣を突きつける。

「……何のことです?」

「しらばっくれるんじゃない。あんたが変な薬を入れているところを見たんだ!」

 それを聞くと爺は、素早い身のこなしですっとハークの腕を抜ける。

 しまった!

 だが、爺はどさりとその場に倒れる。

 エーシャが目を覚ましていたのだ。

「毒を盛っていたのね?」

「ああ、恐らく」

 取りあえずと、枕カバーで、爺を縛り上げようとしたとき。

 ふにっと、爺にはあり得ない感触がハークの手に残る。

「ふに?」

 もう一度、触ってみて確認する。

 小さいが、確かにこの爺には胸が存在したのだ。

「エーシャ。この爺女だ!」

「はっ!?」

 言われてエーシャも爺の胸を揉む。

 エーシャは、そのあり得ない感触が気持ち悪かったらしく後ずる。

「この国の男は、歳をとると女装する文化が……」

 女装する文化があるのかと言おうとして途中でエーシャに殴られた。

 恐る恐る、その顔に手を当て触れてみる。

 妙な感触が気になりつねってみると顔が……。


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2006/07/27(水)