四章.三十六話
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 鼻歌を歌いながら道具を選別するロジャー。

 暗殺者といえども子供。

 限界だった。

「ごめんなさい。僕、全部話します!」

 え?

 そんな顔をするロジャー。

「何から話せばいいですか?」

 その大きな瞳一杯に涙をためて上目遣いでハークを見る。

 その瞬間もの凄い罪悪感に苛まれ何も言えなくなる。

「じゃあ、まず何でハーク君を殺そうとしたの?」

「魔術師だから。魔術師はみんな殺さなきゃいけないんだ!」

「何で魔術師だと殺さなきゃいけないの?」

「魔術師は、僕たちが信じるガートス様を殺しちゃうから……」

 よくわからないが、取りあえず、彼女はやはりガートス今日の者らしい。

 もう許してよ。

 その呟きに皆心傷める。

「ごめんな。もう少しだけ教えて欲しいんだ」

「……なに?」 

 既にアリスは、琥珀色の瞳を真っ赤にしてぽろぽろと大つぶの涙を流していた。

「デッペルグに入り込んだのは君の仲間なのかい?」

「そうだよ。でも。僕には詳しく教えてくれなかった」

「そうか。最後にもう一つ。君たちのアジトを教えて欲しい」

「それは出来ないよ……」

 その瞬間、ロジャーの目が輝く。

 アリスを色々な仕掛けのついた椅子に座らせかちゃかちゃと拘束具をつけ始める。

「ちょっとロジャー!?」

「いくら子供だって言ったって暗殺者なんだろう?」

「それは……」

 ロジャーは構わず続ける。

 頭に不思議な形のヘルメットを被せたときアリスが口を開く。

「街の…み…南にある……パン屋さん」

「そうか、有り難う」

 そう言って、少女の肩をぽんぽんと叩いてやる。

「でも、僕もう……裏切り者だから……」

「心配するな。離さないって前に会ったとき言っただろう?」

 少女は、泣くのを止め目を大きく見開きハークを見つめる。

「俺が、お前のナイトになってやるよ」

 我ながら至極クサイ台詞だと思う。

「ありがとう。お兄ちゃん!」

 これでめでたしめでたし。

 その筈だったのだが、どこからともなく鞭を取り出したロジャーがにやにやする。

「ちょっとロジャー!? もういいでしょ?」

「もしかしたら。でたらめを言っているのかも知れないぞ?」

 そういってぴしっと椅子の背の部分を叩く。

 アリスは、ひっと声をあげぶるぶると震えた。

 失禁したらしい。

 それを見たエーシャが、ロジャーから鞭を奪うと思い切りロジャーの背中を叩いた。

「っ・・・」

 声にならない叫びをあげ、のたうち回る。

「さいってい!」

 そう言ってエーシャは、アリスの拘束具をはずしてやり、担ぎ上げ部屋の外に向かう。

 ハークもそれに続く。

「まて、どこに……」

「お風呂に決まっているでしょう!」

 最後にロジャーを蹴り上げて、エーシャ達は部屋を出た……。


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2006/07/27(水)