――冷たい。
牢には何もない。
その為、石の床の上に直接座っている。
あれから、三時間が経過した。
その間、どうにも出られそうに無いと言うことで、再会を喜んだり、互いの情報交換をしていた。
しかし、それも終わり、今は暇をもてあましている。
「ユリアスの奴大丈夫かな……」
ジェラルが呟く。
一体何回呟けば気が済むんだ。
「これで100回目だよ〜」
エリは数えていたらしい。
「そんなしょうも無いもの数えるなよ」
「だって……」
「そういえば、お前ら一体いつ捕まったんだ?」
「お昼頃かな」
「なっ……」
ずいぶん前の話じゃないか。
ジェラルが呟き続けるのも無理はない。
早くここらか脱出しないと。
そう思い鉄格子に近づいたとき。遠くでうめき声が聞こえた。
次の瞬間エーシャが目の前に現れる。
「相変わらず凄い足だね」
「ありがとう。今ここを開けるね」
そう言って鉄格子を掴むと手前に引き千切った。
目を大きく見開き、驚くジェラルとエリ。
「ハーク。この女は一体なんなんだ?」
「俺もよく知らないよ」
そう。まだエーシャのことはよくわからない。
「取りあえず、ユリアスを探そう。この地下の何処かにいるかも知れない」
そう言うと、遅れてアリスもやってきた。
「多分いるとしたら、地下だと思います。」
「ここも地下だけど?」
「もっと下です」
まだ下があるらしい。
最初から三人で来れば来れば良かったな。
少し後悔しつつも、そのままユリアスの探索に向かうことにした。
だが、地下をくまなく探したが、結局ユリアスを見つけることは出来なかった。
そして、現在ロジャー邸にて緊急会議が開かれている。
「アリス。他にアジトは無いのか?」
「あるはずだよ。でも、僕は何処にあるか知らない」
また、何も解らないか……。
不審者の正体がわかったと思ったら、また新たな謎が出てくる。
「ハークさんごめんなさい。お役に立てなくて……」
しょげるアリスの頭をそっとなでてやる。
するとアリスに笑顔が戻った。
「あ、そうだ。まだみんなに紹介していなかったね」
「じゃあ、みんなで自己紹介しよ〜」
「じゃあ、まずは……」
「俺はジェラル! 世界一の魔術師だ!」
「私はロジャー。愛するエーシャに全てを捧げた男さ」
……沈黙。デッペルグとデキタイトの恥さらし二人に女性衆は皆引いた。
「じゃ〜、気を取り直していくね。私はエリ。ハークと一緒に騎士を目指す見習いです」
「え、じゃあいつもハークさんと一緒いるんですか?」
「うん♪」
アリスは、むむむと唸りながら威勢良く挙手をした。
「僕の名前はアリス。昨日までガートスの人間でした」
「ガートスってなんだ?」
「魔術を忌み嫌う宗教のことです。先ほどあなた方のいた所がガートスのアジトです」
「なっ……」
「でも僕は一生ハークさんについて行くと決めたので安心してください。」
「一生!?」
「だって、僕のナイト様になってくれるっていったから」
そう言って照れるアリス。
その瞬間エリの眉がぴくっと跳ねる。
「じゃあ、次は私ね。私の名前はエーシャ。私は、ハーク君と……」
「誤解を生むからそれ以上は言わないでください!」
「えー。残念だなあ。自慢したかったのに……」
全く油断も隙もあったものじゃない。
そんなことをしながらユリアスのいない再会の夜は更けていった……。
2006/07/28(金)