五章.三十八話
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 ――冷たい。

 牢には何もない。

 その為、石の床の上に直接座っている。

 あれから、三時間が経過した。

 その間、どうにも出られそうに無いと言うことで、再会を喜んだり、互いの情報交換をしていた。

 しかし、それも終わり、今は暇をもてあましている。

「ユリアスの奴大丈夫かな……」

 ジェラルが呟く。

 一体何回呟けば気が済むんだ。

「これで100回目だよ〜」

 エリは数えていたらしい。

「そんなしょうも無いもの数えるなよ」

「だって……」

「そういえば、お前ら一体いつ捕まったんだ?」

「お昼頃かな」

「なっ……」

 ずいぶん前の話じゃないか。

 ジェラルが呟き続けるのも無理はない。

 早くここらか脱出しないと。

 そう思い鉄格子に近づいたとき。遠くでうめき声が聞こえた。

 次の瞬間エーシャが目の前に現れる。

「相変わらず凄い足だね」

「ありがとう。今ここを開けるね」

 そう言って鉄格子を掴むと手前に引き千切った。

 目を大きく見開き、驚くジェラルとエリ。

「ハーク。この女は一体なんなんだ?」

「俺もよく知らないよ」

 そう。まだエーシャのことはよくわからない。

「取りあえず、ユリアスを探そう。この地下の何処かにいるかも知れない」

 そう言うと、遅れてアリスもやってきた。

「多分いるとしたら、地下だと思います。」

「ここも地下だけど?」

「もっと下です」

 まだ下があるらしい。

 最初から三人で来れば来れば良かったな。

 少し後悔しつつも、そのままユリアスの探索に向かうことにした。



 だが、地下をくまなく探したが、結局ユリアスを見つけることは出来なかった。

 そして、現在ロジャー邸にて緊急会議が開かれている。

「アリス。他にアジトは無いのか?」

「あるはずだよ。でも、僕は何処にあるか知らない」

 また、何も解らないか……。

 不審者の正体がわかったと思ったら、また新たな謎が出てくる。

「ハークさんごめんなさい。お役に立てなくて……」

 しょげるアリスの頭をそっとなでてやる。

 するとアリスに笑顔が戻った。

「あ、そうだ。まだみんなに紹介していなかったね」

「じゃあ、みんなで自己紹介しよ〜」

「じゃあ、まずは……」

「俺はジェラル! 世界一の魔術師だ!」

「私はロジャー。愛するエーシャに全てを捧げた男さ」

 ……沈黙。デッペルグとデキタイトの恥さらし二人に女性衆は皆引いた。

「じゃ〜、気を取り直していくね。私はエリ。ハークと一緒に騎士を目指す見習いです」

「え、じゃあいつもハークさんと一緒いるんですか?」

「うん♪」

 アリスは、むむむと唸りながら威勢良く挙手をした。

「僕の名前はアリス。昨日までガートスの人間でした」

「ガートスってなんだ?」

「魔術を忌み嫌う宗教のことです。先ほどあなた方のいた所がガートスのアジトです」

「なっ……」

「でも僕は一生ハークさんについて行くと決めたので安心してください。」

「一生!?」

「だって、僕のナイト様になってくれるっていったから」

 そう言って照れるアリス。

 その瞬間エリの眉がぴくっと跳ねる。

「じゃあ、次は私ね。私の名前はエーシャ。私は、ハーク君と……」

「誤解を生むからそれ以上は言わないでください!」

「えー。残念だなあ。自慢したかったのに……」

 全く油断も隙もあったものじゃない。

 そんなことをしながらユリアスのいない再会の夜は更けていった……。


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2006/07/28(金)