神殿に着くと直ぐにミーチェに呼び出され、ドレイクのいる兵舎へと向かった。
さほどここを出てから日はたっていないが、妙に懐かしさを覚える。
現在。事のいきさつを報告中である。
「ハークと入れ替わりにユリアスがいなくなっただと?」
「はい。ミィーチェちゃん」
はいじゃないだろ。と怒りながらミィーチェが鞭を振るう。
何故いつもジェラルだけが叩かれるのか少し気になった。
「なんでそれで戻ってきたんだ!?」
「だから、唯一の手がかりである不審者を捜しに……」
更に二発こぎ見よい音を立ててジェラルを叩く。
「ミィーチェそれぐらいにしたらどうだ?」
「うるさいドレイク! 貴様が私に指図するな!」
そう言ってまた鞭を振り上げるとジェラルを叩いた。
二人は一体どんな関係なんだろう。
ハークは、ドレイクとミィーチェの関係に興味を示す。
「貴様らとっととユリアスを探してこい!」
そうまくし立てられ部屋を後にした。
――ここは暗く湿っている。
両手両足。そして首が金属の輪で固定されている。
ユリアスに解るのはそれだけだ。
その金属の輪からは鎖が伸び、彼女を壁に貼り付けている。
何度も魔術の使用を試みたが上手くいかなかった。
ひたひたと湿った床を歩く音が聞こえてくる。
黒いローブ。フードで顔まで隠した男がユリアスに近づく。
「ふふふ。お前もあの方に会いたいだろう?」
「あなたは一体何者なんです!? 何故こんな事をするんですか!?」
「私に名乗る名など存在しない。君をこうして張りつけているのはあの方の為」
男はそういうと、ユリアスの身体に触れる。
「嫌!」
ユリアスは、びくっと身体を震わせる。
「安心してください。あなたに危害を加えるつもりはありませんから」
「私をその人に会わせてどうするんです?」
彼女はかすれた声で問う。
必死で震えを押さえようとするが、逆に震えが激しくなる。
「それは解らない。あの方が望むから。それだけです」
「そんな……」
「ああ。それと、あの方は人ではありません。そうですね。人以外の何かです」
ユリアスは訳がわからず困惑する。
無理もない。おとこの答えは全てあやふやなものなのだ。
男は一度ユリアスの身体を下から上に嘗める様にして見る。
「ふむ。少し身体を清めましょう」
「……っ!?」
そう言ってユリアスに背をむけ歩き出す。
「待って! 何をするの!?」
「ですから、そんなに心配しないでください。あなたに危害を加えるつもりは全くないのです」
その声に一度足を止めた男だが再び歩き出す。
「待って! お願いだから待ってよ!」
だが、再び男が足を止めることはない。
いつまでもユリアスの叫びがそこに響いた……。
2006/07/29(土)