五章.四十話
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 神殿に着くと直ぐにミーチェに呼び出され、ドレイクのいる兵舎へと向かった。

 さほどここを出てから日はたっていないが、妙に懐かしさを覚える。

 現在。事のいきさつを報告中である。

「ハークと入れ替わりにユリアスがいなくなっただと?」

「はい。ミィーチェちゃん」

 はいじゃないだろ。と怒りながらミィーチェが鞭を振るう。

 何故いつもジェラルだけが叩かれるのか少し気になった。

「なんでそれで戻ってきたんだ!?」

「だから、唯一の手がかりである不審者を捜しに……」

 更に二発こぎ見よい音を立ててジェラルを叩く。

「ミィーチェそれぐらいにしたらどうだ?」

「うるさいドレイク! 貴様が私に指図するな!」

 そう言ってまた鞭を振り上げるとジェラルを叩いた。

 二人は一体どんな関係なんだろう。

 ハークは、ドレイクとミィーチェの関係に興味を示す。

「貴様らとっととユリアスを探してこい!」

 そうまくし立てられ部屋を後にした。



 ――ここは暗く湿っている。

 両手両足。そして首が金属の輪で固定されている。

 ユリアスに解るのはそれだけだ。

 その金属の輪からは鎖が伸び、彼女を壁に貼り付けている。

 何度も魔術の使用を試みたが上手くいかなかった。

 ひたひたと湿った床を歩く音が聞こえてくる。

 黒いローブ。フードで顔まで隠した男がユリアスに近づく。

「ふふふ。お前もあの方に会いたいだろう?」

「あなたは一体何者なんです!? 何故こんな事をするんですか!?」

「私に名乗る名など存在しない。君をこうして張りつけているのはあの方の為」

 男はそういうと、ユリアスの身体に触れる。

 「嫌!」

 ユリアスは、びくっと身体を震わせる。

「安心してください。あなたに危害を加えるつもりはありませんから」

「私をその人に会わせてどうするんです?」

 彼女はかすれた声で問う。

 必死で震えを押さえようとするが、逆に震えが激しくなる。

「それは解らない。あの方が望むから。それだけです」

「そんな……」

「ああ。それと、あの方は人ではありません。そうですね。人以外の何かです」

 ユリアスは訳がわからず困惑する。

 無理もない。おとこの答えは全てあやふやなものなのだ。

 男は一度ユリアスの身体を下から上に嘗める様にして見る。

「ふむ。少し身体を清めましょう」

「……っ!?」

 そう言ってユリアスに背をむけ歩き出す。

「待って! 何をするの!?」

「ですから、そんなに心配しないでください。あなたに危害を加えるつもりは全くないのです」

 その声に一度足を止めた男だが再び歩き出す。

「待って! お願いだから待ってよ!」

 だが、再び男が足を止めることはない。

 いつまでもユリアスの叫びがそこに響いた……。


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2006/07/29(土)