五章.四十一話
   <<前のページへ  l  トップへ  l  次のページへ>>

 国内……。それもこの島の何処かにいるはずだ。

 神殿。宿舎。兵舎。人目の多いこの場所に潜んでいるとは考えられない。

 だとしたら一体何処に……。

「ハークぅ。何難しい顔してるの?」

「いや、一体何処に例の二人の男が潜んでいるのかと」

「う〜ん。西の森は?」

「ああ。確かにあそこなら可能性はあるな」

 森と言うよりは林に近い場所。

 島の西にはそんなところがある。

「南の遺跡はどうだ?」

「確かに、そこも可能性はある」

 遺跡と言うよりは廃墟。

 2500年前に壊された街の残骸がある。

「取りあえず森の方にいってみよう」

 エリが二手に分かれた方が効率がいいのではないかと提案する。

 だが、これ以上誰かがいなくなるのはということで三人一緒に探しに行くことにする。



 針葉樹が多く根をはり、それは美しくまっすぐに。

 そしてそれは、規則正しく整列している。

 だが、人工のものではない。

 早速ハーク達はそこに足を踏み入れる。

 その瞬間奴らが。蜘蛛が現れた。そして、それは三人にすぐさま襲いかかる。

 ハーク達は急いで応戦する。

 初撃を交わすと、後はあっけなかった。

 理由は蜘蛛の量がいつもより少なかったためだ。

「変だな……」

「ああ。いつもより数が少ない」

 恐らく、残り少なくなったのだろうと結論づけて先へ進む」

 暫く歩いたところで一番後ろを歩いていたジェラルが悲鳴を上げる。

「なっ! 後ろか!」

 どうやら、背後から奇襲をかけられたらしい。

 ジェラルは傷つきながらも蜘蛛を魔術で焼き払う。

「一体か……」

 ジェラルは傷を治しながらぽつりと呟く。

 どうやら、蜘蛛は前より確実に進化しているらしい。

「慎重に進んだ方がよさそうだな」

「世界一の魔術師様に傷を負わせるとは太てぇ野郎だ!」

 世界一の魔術師様なら奇襲ぐらい交わして欲しいものだな。

「俺が後ろに行くからエリが先頭を歩いてくれ。ジェラルは真ん中だ」

「はいな〜」

 うるせー俺に指図するな。

 そう言いつつも、ちゃっかり真ん中に移っている。

 さらには、三人の周りに結界を張りつつ慎重に進む。

 その様子をみてハークは思わず笑ってしまう。

「なにがおかしんだよ」

「いや、普段でっかいこといってる割に案外心配性なんだなって」

「うるせー!」

 悪い悪いとジェラルの方を見るがジェラルの姿がない。

「ジェラル!?」

「あれ? どこに消えちゃったの?」

 辺りを見渡すが何処にもいない。

 まさか、一瞬でジェラルを?

「おーーーーーーい」

 そんなことを考えたとき足下から声が聞こえた。

 ふと、視線を足下に移すと、穴が開いていた。

「お前、なにやってるんだ」

 ハークとエリは思わず吹き出し、声を上げて笑った。

「っ! お前ら! 覚えておけよ!」

 そんな遠吠えを上げるジェラルの元へ二人は降りていった。


   <<前のページへ  l  トップへ  l  次のページへ>>

2006/07/29(土)