五章.四十二話
<<前のページへ  l  トップへ  l  次のページへ>>

 ユリアスの周りを数人の男が取り囲んでいた。

大理石で出来たベッドに彼女は鎖で張りつけられている。

 彼らはおもむろにユリアスの衣服をはぎ取る。

 無論彼女は持てる力を振り絞って叫ぶが彼らには届かない。

 なめらかなウエストからヒップにかけての曲線と割と大きめの乳房があらわになる。

 彼女の身体は白く。

 まるで、戯れを知らない彼女の心を表しているかの様だ。

 そして彼らはその手に塩を持ち、彼女の身体に触れ始める。

 更に、手の空いた者が少しずつ奇妙な香りのする油をそっとかける。

 その何とも言えない奇妙な感触にユリアスは鳥肌を立てる。

 足の爪の先から、耳の先まで彼女の全てにそれらを繰り返す。

 一時間近くそれが続いた。

 彼女の身体は油でひかり、淫靡な美しさを放つ。

 また、油の噎せ返るような香りが更にそれを引き立てる。

 やがてどこからか白いドレスを持った男が数人やってくる。

 彼らは、その場に居た男達と入れ替わり、彼女をベッドから解放する。

 だが、叫び続けながら恥じらいを受けたことで、彼女に既に抵抗する気力はない。

 そして、男達はゆっくりと替わり替わり、下着から順にユリアスに着せていく。

 ユリアスはその間、生気のない瞳でずっと天井を見上げていた。

 もう好きにして。

 そんな彼女の心情をうかがい知ることは容易い。

 男達は最後に銀の首輪をユリアスの首に嵌め込む。

 じゃらっと首輪からたれた鎖が音を立てる。

「美しくなったじゃないか」

 男の一人がユリアスの髪をくしでとかしながらいう。

「案ずるな。もうすぐあの人にお前はお会いすることが出来る」

 だがユリアスはもう何も喋らない。

 暗く湿ったその場所で延々とその天井を見つめるだけだった……。



「ここは一体なんなんだ?」

 まるで洞窟。岩で出来た壁が湿り気で照っている。

 ジェラルが、魔術で明かりを出しその奥を更に照らす。

 その穴は何処までも深く続いているようだ。

 ジェラルを助けに下に降りたハーク達だったが、偶然そこで洞窟を見つけた。

「探してみる価値はありそうだぜ」

「な〜に誇らしげにしてるのさぁ。穴に落っこちたくせに〜」

「うるせー」

 早速奥へと進むことにする。

 だが進めなかった。

 また蜘蛛が襲ってきたのだ。

 それも穴の入り口と穴の奥から。

 数も多い。

「魔法は使えないな……」

 魔法だけではない。こんな狭いところで挟み撃ちでは、ろくに剣も振るえない。

 だが、幸い敵もそれは同じ。

「おいエリ、ジェラルを守ってやってくれ」

「りょうか〜い」

「世界一の魔術師が守られてたまるか!」

 そう言って世界一の魔術師は、洞窟が崩れ落ちるほどの魔術を放った。

「大馬鹿野郎!!」

 洞窟が崩れ落ちるなか、ハークの叫びがこだました……。


<<前のページへ  l  トップへ  l  次のページへ>>

2006/07/29(土)