五章.四十三話
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 ――ハーク達は瓦礫からよろよろと這い出す。

 ジェラルが魔術を放ったとき、シールドを這ったため致命傷にはならなかった。

「おいジェラル。どうするんだよこれ」

 どうするんだとは、勿論不審者のことだ。

 これでは見つかったとしても生きてる補償は無い。

「過ぎたことをとやかく言うなよ」

 少しは反省してほしいものだ。

 ジェラルが魔術で瓦礫を取り払う。

 すると、その下から顔までローブで隠した男二人が見つかった。

「ほら。みつかったじゃねーか」

 誇らしげにいわないで欲しい。

 ともかく男二人の脈を計る。

 どうやら気を失っているだけらしい。

「取りあえず、こいつらを連れて神殿に戻ろうぜ」

 そう言って、またどこからかあのロープを取り出すと、男達をそれで縛った。

 男達をずりずりと引きずりながらハーク達は神殿へと戻った。



「ほう。これが例の不審者か……」

 神殿に戻ると直ぐにミィーチェの元に来た。

 尋問をするならこれ以上の適任は無いだろう。

 早速といわんばかりに水を持ってくるとそれを男二人ぶちまけた。

「げぼっ……」

 そして、早速といわんばかりに一人ずつ鞭を容赦なくたたきつける。

「なっ!?」

 男達は一様に痛みよりも、今の状況に困惑している。

「何のためにユリアスを連れ去ったんだ?」

 ミィーチェは答えを待たずに鞭を何度も振るう。

 その様子にようやく状況が読めた男達は知らないと首を振る。

 おそらくは、拷問に対する訓練を受けているのだろう。

 幾らミィーチェが鞭を振ろうとも微動だにしない。

「ほほう……。貴様らなかなか楽しませてくれそうじゃないか」

 ミィーチェによるショーが始まった。

 男達は知らない。

 この女が他人の痛みを糧に生きていることを……。



 ……三時間後。

 男達はとうとう口を割った。

 ミィーチェの誇る使ったら死ぬんじゃないかと思われる道具の数々。

 それで、彼女は本当に死ぬ一歩手前までいたぶり続け、魔術で回復させる。

 これを繰り返したのだ。

 もはや人の道を外れているとしか思えない。

 その間、終始ジェラルはがたがたと震えていた。

 恐らく彼もまたこの仕打ちを受けたことがあるのだろう。

 男達によるとユリアスはデキタイトにあるアジトにいるらしい。

 らしいというのは、彼らはここに残っていたため詳しいことは解らないのだという。

 これだけいたぶられたのだ。もう嘘をついていたりはしないだろう。

「で、ミィーチェちゃん。この人達一体どうするんだ?」

「そうだな。私のペットとして一生遊んでやろう」

 二人の男はそれを聞き気を失った。

 頭の中で、今あったことを繰り返し絶望に至ったのだろう。

「おい、ハーク。解ってるな? 直ぐにユリアスを探しに行ってこい!」

「はい!」

 一秒でも早くこの場から離れたかったハークは即答する。

 そして、エリとジェラルを連れて直ぐにデキタイトに向かうことにした。

 その夜から、夜な夜な彼女の部屋から悲鳴が聞こえて来る。という七不思議が誕生したのは秘密である。


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2006/07/29(土)