ユリア……。
誰かが、私を呼ぶ声が聞こえる。
正確には私では無いが、何故かそれは私の事を呼んでいるという確証があった。
ユリア……。
あなたは誰?
ユリアスは自分に呼びかける何かに向かって問いかける。
そして、彼女を呼ぶ声は次第に近づきやがて彼女の目の前に現れる。
ユリア……会いたかった。
紅い髪紅い瞳細く鋭い目つき。
ジース?
彼女にはそれが解った。
何故だかはわからないが、それがジースであり、自分も何故かずっと会いたかった気がした。
もう、お前の側から離れたりしない……。
ジース……。
突然、目の前が強い閃光により見えなくなり、はっと目を覚ます。
夢か。
いや、それは夢では無かった。
目を覚ました彼女の目の前には、膨大な魔力を放つ意思が存在した。
「まさか!?」
「そうだ、このお方は2500年前デッペルグを破壊したジース様だ」
その意思の場にいた男が説明する。
ジースをなんと表現したら良いのだろう。
確かにその存在を感じることは出来るのだが姿が見えない。
あるのは彼の意思だけ。
いや、それも正しくない。彼の意思はその中には存在しないのだ。
「でも、もうここには彼の恨む者はいないはず!」
「ああ。その通りだ。だから、少し助言をして差し上げたのだ」
「助言?」
「ユリアに害をなす者がいると」
「なんて事を……」
しかし一体誰のことだろう。
いやそれよりも……。
「何故ここにジースが!?」
「ふふ。気になるか? ならば教えてやろう」
――男の話によるとジェラルがユリアスを生き返したときにジースを目覚めさせたらしい。
そして、ジースにハークがユリアスに害をなす者だと吹き込んだのだ。
「じゃあ、今までの化け物も!?」
「ああ。そうとも。この方が我々に知識を与えてくださった。それを元に我々が生み出したのだ!」
あの蜘蛛はジースの知識によって生み出されハークを殺すために動いていた。
「そして、このお方は、君の手によってここへ姿を現した」
「なっ……」
先ほどの夢でのやりとりがそれだった。
男の話ではそう言うことだった。
「あなた達は何のためにこんな事をしているのよ!?」
「我々は魔術師が難いのだよ」
「何故!?」
それは君の知るところではない。
そう言って、彼女の鎖を一度ぐいっと引っ張る。
「さあ、せいぜい楽しもうじゃないか!」
その言葉を皮切りにジースは次々と悪魔を生み出し始めた。
「止めてジース! またあんな事を繰り返すつもり!?」
だが、彼女の叫びはいつまでもジースに届くことは無かった。
2006/07/29(土)