五章.四十四話
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 ユリア……。

 誰かが、私を呼ぶ声が聞こえる。

 正確には私では無いが、何故かそれは私の事を呼んでいるという確証があった。

 ユリア……。

 あなたは誰?

 ユリアスは自分に呼びかける何かに向かって問いかける。

 そして、彼女を呼ぶ声は次第に近づきやがて彼女の目の前に現れる。

 ユリア……会いたかった。

 紅い髪紅い瞳細く鋭い目つき。

 ジース?

 彼女にはそれが解った。

 何故だかはわからないが、それがジースであり、自分も何故かずっと会いたかった気がした。

 もう、お前の側から離れたりしない……。

 ジース……。

 突然、目の前が強い閃光により見えなくなり、はっと目を覚ます。

 夢か。

 いや、それは夢では無かった。

 目を覚ました彼女の目の前には、膨大な魔力を放つ意思が存在した。

「まさか!?」

「そうだ、このお方は2500年前デッペルグを破壊したジース様だ」

 その意思の場にいた男が説明する。

 ジースをなんと表現したら良いのだろう。

 確かにその存在を感じることは出来るのだが姿が見えない。

 あるのは彼の意思だけ。

 いや、それも正しくない。彼の意思はその中には存在しないのだ。

「でも、もうここには彼の恨む者はいないはず!」

「ああ。その通りだ。だから、少し助言をして差し上げたのだ」

「助言?」

「ユリアに害をなす者がいると」

「なんて事を……」

 しかし一体誰のことだろう。

 いやそれよりも……。

「何故ここにジースが!?」

「ふふ。気になるか? ならば教えてやろう」

 ――男の話によるとジェラルがユリアスを生き返したときにジースを目覚めさせたらしい。

 そして、ジースにハークがユリアスに害をなす者だと吹き込んだのだ。

「じゃあ、今までの化け物も!?」

「ああ。そうとも。この方が我々に知識を与えてくださった。それを元に我々が生み出したのだ!」

 あの蜘蛛はジースの知識によって生み出されハークを殺すために動いていた。

「そして、このお方は、君の手によってここへ姿を現した」

「なっ……」

 先ほどの夢でのやりとりがそれだった。

 男の話ではそう言うことだった。

「あなた達は何のためにこんな事をしているのよ!?」

「我々は魔術師が難いのだよ」

「何故!?」

 それは君の知るところではない。

 そう言って、彼女の鎖を一度ぐいっと引っ張る。

「さあ、せいぜい楽しもうじゃないか!」

 その言葉を皮切りにジースは次々と悪魔を生み出し始めた。

「止めてジース! またあんな事を繰り返すつもり!?」

 だが、彼女の叫びはいつまでもジースに届くことは無かった。


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2006/07/29(土)