最終章.四十九話
<<前のページへ  l  トップへ  l  次のページへ>>

 ――数年後。

 あれからハークは国に仕える騎士となりやがて近衛となった。

 その目的は二つ。

 一つは、ヴァルクに近づくこと。

 もう一つはユリウスを見張るため。

 もともと、腕には自信があったので、特に苦労はしなかった。

 影ながらユリウスを見張りユリアとの接触を影ながら避けるよう細工していた。

 今、ハークの頭にある世界の滅亡を止める方法は三つ。

 一つ目はユリウスにユリアを殺させない。

 二つめはユリアを死なせない。

 最後にジースに魔術を使わせない。

 もっともあのときヴァルクとジースを巡り合わせなければ良かったのだが間に合わなかった。

 それにそれでは、ジースが可愛そうな気もした。

 よって、ハークはユリウスを見張り、一つめのユリアを殺させないを実行中だ。

 だが、それも危ういかも知れない。

 そう。既にユリウスはユリアに会っているかも知れないのだ。

 あのユリウスという男はなかなかどうして護衛もつけずにちょろちょろと街に出かけてしまうのだ。

 気づいたときはそっと後をつけるがそれも確実ではない。

 そんなことを考えていたとき、大事な用事があるからとユリウスに近衛が集められた。

 何をするのかと思えばヴァルクの家に赴くらしい。

 やはり、ユリアと既に接触していたのだ。

 出来れば、何とかして彼を止めたいが、止めたところで何度でもユリアに会いに行くだろう。

 その為ここはおとなしくすることにした。



 ――ヴァルク邸

 そこに着くとユリウスはいきなりノックもせずにドアを開け中へ入ってゆく。

 相変わらずこの人は……。

 食堂らしきところにヴァルク達はいた。

 ヴァルクが驚いてむせている。

 無理もないだろう。

「突然押し寄せて悪いな」

 悪いなんだなんて少しも感じていないだろう。

 食事中にずかずかと入り込める神経には痛み入る。

「いえ、この様な館で申し訳ありませんが、いつでも歓迎します」

「それは、ありがたい」

 古文書の通りに進む展開。

 もしやあれは、俺がここに過去に来ていた未来なのかも知れない。

 そんな気すらしてくる。

 それから……。

「…少し時間を下さい」

「ふむ。よかろう。決心がついたら我が城に来る通い。良い返事を期待しているぞ」

 そう言って、出て行くルミウス達にはついて行かず、ハークはその場に残った。

「ヴァルク。今は色々考えるところがあるだろうが大事な話があるんだ」

「大事な話? 解った私の書斎で聞こう」

 そう言って、二人はその場を後にする。


「で、大事な話とはいったい何なんだ?」

 ハークは決心していた。

 事のいきさつを全て彼に話すと。

 信じてもらえるかは解らない。

 だが、ここで彼に全てを離せば確実に未来は変えられる。

 そう考えたからだ。

 そして、ハークは語り始めた……。


<<前のページへ  l  トップへ  l  次のページへ>>

2006/07/30(日)