最終章.五十話
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 ――あれから一週間。

 結局ヴァルクには信じてもらえなかった。

 ジースは、古文書の通りコロッセウムに通い続けている。

 ユリウスの方はと言うと、毎日毎日まだかまだかと呟き落ちつきがない。

 このままではまずい。

 ハークは次の手段としてユリアを殺させない事に集中することにした。

 そう。

 決闘のあと、ユリアを殺させない。

 もし彼女を守ることが出来れば未来が変わる。

 ハークはそう信じた。

 また、ユリウスによって近衛が集められた。

 再びユリアの所に赴くのだ。

 ハークは拳をぐっと握りしめた……。



 そして、大会当日。

 それまでは何も変わらなかった。

 ユリウスが再びユリアの元を訪れ、ジースが彼にユリアをかけて勝負を挑む。

 そう。

 何も変わらない。

 ここでユリアを守れば全ては上手く行くのだ。

 だが、言い知れぬ不安が彼を襲う。

 何も変わっていないから。

 彼が、過去に来たことで少しは歴史が変わってもおかしく無いのだが、何の変化もないのだ。

 やはり未来は変えられないのか。

 そんな不安が毎日彼を襲っていた。

 もう、失敗するわけにはいかないというプレッシャーもそれに加わる。

 それをあざ笑うかのように試合は始まった……。

 

 始めに動いたのはジースだった。

 ジースは手に光球を出現させ、それをルミウスに投げつける。ルミウスはそれを片手ではじいた。

 そのまま、炎の槍を作り出しジースに突撃する。それを警戒しつつ、ジースは右手に炎の球を作り出し、それを両手で構えルミウスの槍を相殺する。

 ルミウスが間合いをとるが、ジースは追い打ちとして、右手を振り上げ冷気を出す。ルミウスはそれを全身に受けた。

 体中が赤くなり凍傷となるが、直ぐに回復する。

 古文書の通りの展開。

 やはり、この後なんとしてもユリアを守らなければ……

 そう考えたときだった。

 ルミウスが召還術を使う。

 それをジースがシールドで防ぐ。

 だが、そのあとジースが使うはずの召還術は無かった。

 失敗したのだ。

 ドラゴンにシールドを破壊される。

 そして、ジースはドラゴンに突き飛ばされ動かなくなった。

 未来が変わった。

 ハークはそう確信した。

 しかし、これで良かったの疑問に思う。

 ジースが負けた。

 これで、もうユリウスがユリアを殺すことはないだろう。

 だが、納得がいかない。

 その時無情にも終了の合図がなった……。


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2006/07/30(日)