――あれから一週間。
結局ヴァルクには信じてもらえなかった。
ジースは、古文書の通りコロッセウムに通い続けている。
ユリウスの方はと言うと、毎日毎日まだかまだかと呟き落ちつきがない。
このままではまずい。
ハークは次の手段としてユリアを殺させない事に集中することにした。
そう。
決闘のあと、ユリアを殺させない。
もし彼女を守ることが出来れば未来が変わる。
ハークはそう信じた。
また、ユリウスによって近衛が集められた。
再びユリアの所に赴くのだ。
ハークは拳をぐっと握りしめた……。
そして、大会当日。
それまでは何も変わらなかった。
ユリウスが再びユリアの元を訪れ、ジースが彼にユリアをかけて勝負を挑む。
そう。
何も変わらない。
ここでユリアを守れば全ては上手く行くのだ。
だが、言い知れぬ不安が彼を襲う。
何も変わっていないから。
彼が、過去に来たことで少しは歴史が変わってもおかしく無いのだが、何の変化もないのだ。
やはり未来は変えられないのか。
そんな不安が毎日彼を襲っていた。
もう、失敗するわけにはいかないというプレッシャーもそれに加わる。
それをあざ笑うかのように試合は始まった……。
始めに動いたのはジースだった。
ジースは手に光球を出現させ、それをルミウスに投げつける。ルミウスはそれを片手ではじいた。
そのまま、炎の槍を作り出しジースに突撃する。それを警戒しつつ、ジースは右手に炎の球を作り出し、それを両手で構えルミウスの槍を相殺する。
ルミウスが間合いをとるが、ジースは追い打ちとして、右手を振り上げ冷気を出す。ルミウスはそれを全身に受けた。
体中が赤くなり凍傷となるが、直ぐに回復する。
古文書の通りの展開。
やはり、この後なんとしてもユリアを守らなければ……
そう考えたときだった。
ルミウスが召還術を使う。
それをジースがシールドで防ぐ。
だが、そのあとジースが使うはずの召還術は無かった。
失敗したのだ。
ドラゴンにシールドを破壊される。
そして、ジースはドラゴンに突き飛ばされ動かなくなった。
未来が変わった。
ハークはそう確信した。
しかし、これで良かったの疑問に思う。
ジースが負けた。
これで、もうユリウスがユリアを殺すことはないだろう。
だが、納得がいかない。
その時無情にも終了の合図がなった……。
2006/07/30(日)