最終章.五十一話
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 歴史。

 未来が変わった。

 だが、本当にこれでいいのか。

 ハークは、もう何百とその問いを自分に投げかける。

 確かにこれで未来は変わるだろう。

 しかし、それではあまりにもユリアが不憫だ。

 あれから、三日が経った。

 ヴァルクの話によるとユリアもジースも部屋に閉じこもったまま顔を見せないらしい。

 恐らくショックでふさぎ込んでしまったのだろう。

 ジースやユリアの事を考えればそれは仕方の無いことだ。

 必要最小限の物しか置いていない彼の時代と全く変わらない兵舎でハークは一人ため息をつく。

 ユリウスの方はと言うと、彼は結婚式の準備に取りかかっている。

 日々喜々とした顔で自ら指示を出しているのだ。

 少しはジース達の気持ちも考えて貰いたいものだな。

 ジースについてお咎めが無いのはユリウスなりの配慮なのだろうか。

 何事も無ければいい。

 ハークが望むのはそれだけだ。

 だが、それを裏切る報告が入った。

 突然、兵舎の入り口を開き、ヴァルクが息を切らしながら入ってきた。

 そして彼は言った。

 ユリアが死んだ――。

 言い知れぬ悲しさがハークを襲う。

 だが、それと同時に不安がよぎる。

 ジースはユリアを甦らせようとするのでは無いだろうか。

「ヴァルク! 悲しみにふけっている場合じゃないぞ!」

「何を突然……」

「ジースを止めなくては! 彼はユリアを甦らせる!」

「何だと!?」

 それだけ言って二人は直ぐに部屋を出る。

 ジースを止めなくては!

 二人は急いで兵舎を離れ、ヴァルクの家に向かう。

 ジースがユリアを甦らせれば、恐らくあの悲劇が繰り返される。

「お前が未来から来たって言うのは本当なんだな?」

「ああ。ジースは術に失敗して意思を魔力に飲まれてしまう」

 湖の長い橋を駆け抜けながら、はーくはもう一度ヴァルクに未来がどういう事になったのかはじめから説明する。

 だが、ヴァルクはまだ信用出来ないといった顔をする。

「頼む。信じてくれ!」

「まだ、納得がいかないが事が起きたら後戻りは出来ないな」

「それで構わない」

 やがてヴァルクの家が着く。

 当然走ることを止めずジースの部屋に向かう。

 だが、ジースはいなかった。

 彼の部屋は酷く散らかり、壁や家具がボロボロになっている。

 恐らくジースが、行き場のない思いをそれにぶつけたのだろう。

「ヴァルク。ユリアはどこに?」

「ユリアは彼女の部屋に寝かせている」

「そっちにいるかも知れん」

 急いで彼女の部屋に向かう。

 しかし、ジースの姿は愚か、ユリアの遺体もない。

 ハークは肩を落とす。

「一体どこに……」

「すまないが、俺にも解らない」

 その後二人は、ヴァルクの家をくまなく探したがジースを見つけることは出来なかった。

 こんな時に、燦々と照り光る太陽に恨めしさを覚えるハークだった……。


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2006/07/31(月)