毎日毎夜ジースを探した。
騎士団を動かしてジースを探した。
だが、ジースが見つかるどころか何の情報も入ってこない。
まずい。
非常にまずい。
ハークの心を焦燥感が支配する。
なぜなら、古文書と歴史が替わり、ジース魔術を編み出すのが遅れているのだ。
三日古文書より歴史が遅れている。
ジースが消えてから既に一週間。
ハークがここにいられるのは恐らく後四日なのだ。
そして、古文書によると魔術を編み出すには二週間掛かっている。
つまり後一週間後に魔術が完成する。
もし、それまでに彼を見つけることが出来なければ、最後の手段として彼を滅ぼすこともできない。
無論、可能であればの話だが。
兎に角いまは、ジースを見つけるしかない。
ハークはそれだけを頭に置きながら行動することを決めた。
そうと決まればと言わんばかりの勢いで兵舎をでる。
そして、湖の向こうを目指し走り出す。
だが、その途中。あの橋の上でそこにいるはずの無い人物を見つけてしまう。
「ユリア!?」
生まれつき肌の白いユリアだが、今は尚白い。
しかし、走ってきた彼女の息遣いは生者のそれである。
ユリアがここにいるという事はジースが……。
「ハークさん……。ジースが変なの!」
とうとう術を編み出してしまったようだ。
ジースが、見つからずに俺がこの世界から消えるよりは……。
「で、ジースが変ってどういう事なんだ?」
「それが……」
ユリアが目覚めるとジースが側にいた。
彼は疲れた顔をしていたが、彼女を咎めるでなく笑顔を見せた。
だが、次の瞬間彼は苦しみ出すとそれきり出て行ってしまったのだと言う。
「そうか。ユリアはまだ、休んでいるといい。ジースは俺が探すから」
「でも……」
何か言いたげだったユリアだったが、彼女をそのままに兵舎へと急いだ。
こうしてはいられない。
急いで、兵舎に戻り城の守りを固めるよう伝える。
あの悪魔が来てからでは遅いのだ。
そのことを島中に伝えたとき街の方から火が上がった。
やはり、現れてしまったか……。
ハークは休む暇なく騎士や僧侶を何人か連れ街の方に向かって駆け出す。
だが、どうする。
俺がジースに勝てるのか?
いや、勝たなければならないんだ!
そう自分に言い聞かせ更に足を速める。
その間にも街が焼けていく。
「これ以上好き勝手させて堪るか!」
その叫びは遠く天まで届くかのごとくその場にこだましたという……。
2006/07/31(月)