――容赦なくジースの周りから現れる悪魔達。
だが、発生してくるそれらをその瞬間から叩いて行くので街へ被害はそれ以上広がらなくなっていた。
「魔力さえ無くなれば……」
「なに? 魔力が無くなればいいのか?」
「ああ。恐らく、それでこの悪魔達はいなくなるはずだ」
それは無理だ。
魔力は、この世に存在する水の量よりも多く存在する。
魔力を無くす事は不可能だ。
だが、ヴァルクは何か考えにふけっている。
何か策があるのだろうか。
「城に……。王なら、魔力をどうにか出来るかも知れない」
「どういう事だ?」
「やってみなければ解らないが、国中全ての魔術師が一斉に魔術を使えば、一時的にこの国の魔力は無くなるかも知れない」
何を言い出すかと思えば……。
確かに理論上は可能だろう。
だが、果たして上手く行くのだろうか。
そんなことを考えたハークだったが、今の状況を変えられるのはそれしかない。
「わかった。急ぎ城に伝えてくる」
ハークはそう言うと急いで走り出す。
湖の橋が長く感じた。
ハークは橋を駆け抜けやがて城に到着。
そして、王の所までその速度を維持したまま駆け抜ける。
何事か!?
王の間にそんな雰囲気が漂うが気にはしていられない。
「王よ。このデッペルグを救うため私に協力して頂きたい」
近くにいた、従者がハークを止めるが、王がそれを良いとする。
「一体どうしたというのだ? 詳しく話してみよ……」
ハークは。王にこれまでのいきさつと現状を全て伝えた。
王もこの事態の収集に頭を抱えていたため、直ぐに城中……。いや、全ての国民にその旨を伝えた。
王から騎士、僧侶へ。
騎士、僧侶から全ての国民にそれは伝わった。
そして、一斉に魔術を解き放つ。
その日デッペルグの空が、血のように紅く染まった。
夕焼けとは違う異質の色。
これならジースを救うことが出来るかも知れない。
ハークは城の窓から自分も魔術を解き放ちながらそう思った。
いや、願った。
だが、彼は結果を知ることが出来なかった。
考えていたのと時間にずれがあったのだ。
彼の身体は徐々に薄れる。
やがて、意識が遠くなりハークはその時代から姿を消した――。
2006/07/31(月)