二章.十一話
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 ――両手両足を椅子か何かに縛られ視界と口が塞がれている。

 何故かは解らない。

 目を覚ましたら既にこういう状況だった。

 もがいてみたがビクともしない。

 一体何があったんだろう。

 やがて人の足音が聞こえてきた。

「むーむー!」

 口をふさがれているためろくに声が出ない。

 それでも助けを求めた。

 人の足音がひたひたと湿った音を立てて近づいてくる。

 早く助けて。

 足音が目の前で止まった。

 太ももに何か冷たい物があたられる。

 なんだろう。

 ぎちゅぎちゅ。

 そんな音がして太ももに熱が走る。

 続いて激痛がやってきた。

「むー!?」

 ぎちゅぎちゅ。

 頭の中が真っ白になる。

 痛みとショックで恐怖という感情が着いてこない。

 悪寒がする。

 体中から嫌な汗が噴き出してきた。

「むーむー!?」

 止まった。

 だが、その隣に冷たい感触が移る。

 ぎちゅぎちゅ。

 ナイフか包丁……いや、のこぎりだ。

 何のためらいもなく太ももを裂いていく。

 それが左の太ももに6回行われた。

 途中、あまりの激痛に耐えられず気絶したが水をかけられて起こされた。

 ようやく終わったのだろうか。

 それともこれから殺されるのだろうか。

 そんな事を考えていると、椅子から解放された。

 だが手足の自由は戻らない。

 俯せに転がされる。

 隣で一度金属の擦れる音がした。

 今度は一体何を……。

 シャツを無理矢理に剥がれた。

 そして、じゅっという音と共に背中に熱が走りタンパク質の焦げた臭いがする。

「っ!?」

 ゆっくりと何回も背中を鉛筆の様な物でなぞられる。

 熱い。

 何をされているか解らない恐怖に身体がもの凄い勢いで震える。

 汗が止まらない。

 助けて……。

 もう、声も出なかった。

 やがてそれも諦めされるがままにする。

 何をやっても無駄。

 この人が満足するまでいたぶられる。



 背中の殆どが焼かれたとき。

 突然そいつは走り出した。

 何かあったのだろうか?

「ちょっと、龍太!?」

 母の声が聞こえる。

 ああ、ここは自分の家だったんだ。

 助かった。

 全ての束縛から解放され、泣き崩れる母の顔が見られた。

「ごめんね……」

 母は何度も謝った。

 だが、幼い自分にその意味は解らない。

 やがて救急車が呼ばれ病院へと運ばれていった……。


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2006/08/08(火)