二章.十三話
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 ――明朝。

 結局昨日は眠る事が出来なかった。

 銀行が開くまで京都の街をぶらぶらと歩き回ることにする。

 腹減った。

 一秒一秒が長く感じる。

 もうだめだ。

 一歩。足を踏み出す度に体力を消耗する。

 歩きたくねぇ。

 チェーン系のカレー屋の前に丁度いい石があったのでそこに腰掛ける。

 小学生らしき男の子がどこからか現れ俺の周りをぐるぐると回り始める。

 何をしているんだろう。

 俺が珍しいのか。

 見ず知らずの人間にこんなことをするのは少々危ない気がする。

 俺じゃなかったら何かされてるって。

 きっ。と睨み付けると余計に加速して俺の周りを回る。

 心の奥で熱くこみ上げてくる物があったがぐっとこらえ俯く。

 早く去ってくれ。

 だが、その子はそれから30分近く俺の周りを回っていた。

 疲れた。

 ただでさえ疲れているのにとんだ追い打ちだ。

 取りあえず銀行が開く時間になったのでATMで金をおろす。

 まずは飯だ。

 折角だからうまい物を喰いたい。

 そう思って辺りをうろついたが結局俺が入ったのは牛丼屋だった。

 頼んだのは牛丼。

 サービスで漬け物とみそ汁が付いてきた。

 ありがたい。

 あまりの空腹のため味わう事をせずただひたすらにそれを腹にかき込む。

 僅か数分でそれを平らげると一服してそこを出た。

 八つ橋でも買っていくか。

 そう考えて駅内にある土産屋で生のと乾燥したのを大量に購入した。

 風呂に入りたい。

 近くに銭湯やサウナが無いか探すが見つからない。

 仕方なく新幹線の切符を買って帰る事にする。

 長いようで短かった俺の旅はここで終わる。

 本当はもっと北。

 北海道まで行きたかった。

 でもこれでいい。

 もう、飢えるのは嫌だ。

 これから俺に様々な罰やツケが回ってくるだろう。

 だけどそれももういいんだ。

 これからは頑張ってやる。

 だが、その決意はその時だけのものとなる。

 何故なら家にもどった数週間後。

 俺は死ぬんだから……。


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2006/08/08(火)