二章.十七話
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 ――しくじった。

 見知らぬ部屋。

 俺を見つめる家族の目。

「起きた? ここどこだかわかる?」

 そして、医者らしき男。

「……病院」

「自殺なんていかんよ。生きたくても生きられない人沢山いるんだからな」

「はあ……」

 ぼーっとする頭の中で大きな溜息を一つ。

 自業自得とはいえめんどくさい事になったな。

「睡眠薬なんていくら飲んでも死ねないからもうやるんじゃないぞ」

「はい……」

 気まずい。

 俺、何やってんだろな。

「お前昨日凄いハイテンションで踊りまくってたんだぞ?」

 心なしか楽しそうに言うお袋。

 全く記憶にない。

「尿瓶でようたす時に俺のでかすぎて尿瓶にはいらねぇよとか叫んでたし」

 あの、死んでもいいですか?

 それ聞いて確実に死ぬ決心ついたじゃねぇか。

「寝る」

「まだ寝るの? あれだけ薬飲んだから眠れないんじゃない?」

 ほっといてくれ。

「あれだ。いつまでもここにいるわけに行かないだろうから……」

「ああ、お前が自殺しないように見張ってなきゃ行けないから帰れないよ」

 まじかよ。

「点滴ぶら下げるやつで自分の首活気って死のうとしたりしたんだから」

「いや、覚えてない」

 もう。

 放っておいてくれ……。



 俺は胃洗浄とか言うのを受けたらしい。

 で、目を覚ましたら睡眠薬を大量に服用した副作用でトリップした。

 その時の記憶はない。

 きっとそれも副作用なんだろう。

 更に、そんなことをしたもんだから胃腸はぼろぼろ。

 その後毎日のように突然腹の筋肉が直接腹の中に手を突っ込んで握りつぶされたような激痛が走ったり。

 生まれてこの方に二、三度あるかないかという便秘にかかったり。

 それだけならまだしも、便秘を治すためにケツに座薬を突っ込まれた。

 自分でできるっつの!

 座薬は医療行為だから自分で出来なかった気もするけど。

 更に更に、腹の痛みに耐える事が出来ず声を上げた。

 それによって、あろうことか……。

 顎がはずれた。

 だが、医者に真に受けてもらえず、二日間放置された。

 腹の痛みと顎の痛みの二重奏。

 そして、ようやく顎がはずれたのを確認し、院内の歯科に連れて行かれ顎を嵌めて貰った。

 白いゴムバンドで顎を固定。

 一度はずれるとはずれやすくなるらしい。

 だが、その夜の食事がまたすさまじかった……。

 一度はずれるとはずれやすくなる。

 と、言う理由で俺の晩飯ははミキサーに掛けられた。

 鼻から透明な管を通しそこからそれを注ぐという。

 散々拒んだが、これ喰うっていうか、流し込めば明日退院できるといわれて受け入れた。

 だが、無理だった。

 点滴の要領で1時間掛けて流し込むというのだが、途中で詰まるは胃が痛いはで途中で無理矢理管を抜いた。

 痛いわけだ。

 胃に入った管の先が溶け胃にあたっていたのだ。

 これ、俺で実験したんじゃねえの?

 ともあれ、自殺をする前より死にたくなったことだけは確かだった……。


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2007/01/13(土)