二章.十八話
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 ――空。

 俺の下に雲が見え、更にその下に海が見える。

 ただ、それだけの光景に過ぎないはずなのに……。

 薄汚れた俺の心でも。

 濁った俺の目でも。

 その光景は美しいと思えた。

 俺は今沖縄に向かう飛行機の中にいる。

 何故沖縄に行こうと思ったか。

 どうせここまで来たんだから端っこまで行ってやろう。

 そう思っただけだ。

 だが、一つだけ決意したことはある。

 沖縄で、何かできなければ俺は死ぬと決めたんだ。

 飛行機代は長崎のパチスロで稼がせて貰った。

 普段負けばかりなのに勝ち続けてるのが不思議でしょうがない。

 なに。

 昨日は、今日とぶ飛行機を待つために日付を間違い空港の外で野宿するはめになり。

 その時に不審者と間違われ強制的に敷地から出て行く様に言われたり。

 さらに、移動して寝てたら目の前でいぬが車にひかれたり。

 運がいいわけじゃあ、ないらしい。

 結局マンガ喫茶で時間を潰しただけで寝てはいない。

 はあ。

 何するかなぁ。

 沖縄に着いたら仕事探して住み着くか?

 一年中暖かくて良いだろうな。

 ああ、俺熱いの苦手だ。

 やっぱ死ぬか。

 そんな下らない事を終始考えていた。



 沖縄に着いた。

 周りの飛行機と比べると俺の乗っていた飛行機が小さく見えるのは気のせいだろう。

 さて、何処に行くかな。

 那覇におりたった俺は取りあえずモノレールに乗り、その間に目についたパチスロ屋の多く立ってる駅で降りた。

 ここで何かやらなければ死ぬかなどと考えていた人間が真っ先にスロットとは笑える。

 まあ勝ったから良いけどな。

 勿論、閉店までいた。

 またホテル探しだ。

 しかし、未踏の地でホテルを自力で探し当てるのは困難だ。

 そんな時はどうするか?

 簡単なこと。

 タクシーを使う。

 丁度目の前でタクシーの運転手が仲間同士で暇そうにくっちゃべってる。

「あの、この辺りで安いホテルまでお願い出来ます?」

「安いホテル? ああ。あそこが安かったな」

 運転手は嬉しそうに俺をタクシーに乗せる。

 無理もない。

 客なんか滅多に来ないんだろうな。

 何故って?

 辺りにはお世辞にも美しいとは言えない町並みで、風俗店ばかり建ち並んでいるんだが、すたびれてる。

 おかしいよな。

 もっと沖縄って綺麗なところだとおもったんだが、やっぱ何処でも大差ないらしい。

 それよりもこの辺りのバイトの時給が俺の地元より安いのが少し気になった。

 沖縄って廃れているのか?

「着いたぞ。ここなら安く住むと思うぜ」

「ありがとう。おつりは良いです」

 そう言って遠慮する運転手に万券押しつけ俺はホテルに入った。

 これまた凄まじく廃れたホテルだ。

「あの……」

「ああ、はい。お泊まりですか?」

「ええ」

「何泊します? 一泊4000円ですけど」

「うーん」

「もし、一週間泊まるなら一泊2000円ですよ」

 おいおい。

 カプセルホテル並の安さだな。

 先払いでといわれたが、途中で出て行った場合、通常料金で精算して差額は返してくれるらしい。

 無論、差額がマイナスになった場合でもそれ以上は請求しないと言われた。

 その申し出に心地よく了解し俺はここに何日か泊まることにした……。


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2007/01/15(月)