二章.十三話
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 ――夜。

 俺はシャワーを浴びながら、ふと帰宅部の一員になった事を思い出す。

 あの後入部届とおぞましい内容の契約書を書かされたりしていた。

『私はいかなる生命の危機に対してもその責任を帰宅部に無いものとここに誓います』

 いかなる生命の危機とは何さ。

 帰宅部の部活動中にどんな生命の危機が待っているというのさ。

 堺先輩曰く。

「別に形式的な物だから気にせんでええて」

 もの凄い適当に流された。

 ただ、怪我や精神的なものに対しては保証をしてくれるらしい。

 そういえばどんな活動をするのか聞くのを忘れた。

 今日はメンツが少ないからと早々に帰された。

 また明日聞こう。

 そう決めて風呂場から出る。

 あ。着替えを持ってくるのを忘れた。

 しかも先ほどまで着ていた服は、洗濯機の中で回っている。

 紀美の奴いつの間に洗濯をしていたんだ。

 まあいいか。

 腰にタオルを巻いてそっと廊下を見回す。

 どうやら紀美はいないらしい。

 いくら幼なじみとはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 何となく忍び足で部屋に向かう。

 部屋のノブに手をかけると勢いよく開いた。

 開いたドアに頭を打ちつけそのまま倒れ込む。

「ぐう……」

「あ。早月今着替え持って行こうと……。大丈夫?」

「大丈夫じゃない」

 着替えを持ってきてくれるのは助かる。

 だが、力一杯ドアを開けることは無いと思うんですけど。

 ふと、紀美の視線が下の方にあるのに気づく。

「なっ……」

 タオルが無い。

 赤面しつつ床に落ちたタオルを急いで腰に巻く。

「はい。じゃあ、着替えね」

 紀美は、そう言って着替えを差し出して何事もなかった様に去っていった。

 無反応ですか。

 先日見せた恥じらいはどこへ……。

 恥ずかしさよりも寂しさの方が先行する。

 何故だろう。

 腑に落ちない何かを気にしつつも無理に自分の中で平静を装ってみた……。


七川早月瀬本紀美

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2006/08/09(水)