二章.十四話
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「七川! 早速部活いくで!」

 放課後。

 ホームルームが終了して直ぐに俺は堺先輩に手を引かれる。

 昼休みが終わってからさっきまでずっと寝ていたのに……。

 よくもまあこんなにしゃきっとしていられる。

 廊下や階段を徒競走の勢いで駆け抜けていく。

 俺はそんな先輩にほとほとあきれた。

 で、たどり着いた先が……。

『保健室』

「ちょっと待ってください」

「なんや?」

「どうして保健室なんですか?」

「部室や!」

 理解に苦しむ。

 昨日は校長室でしたよね。

 構わず先輩は力一杯その扉を開いた。

「うーす」

「来たわね。七川君」

「こんにちは」

 さすが相当数の生徒を抱えるだけあって至極広い。

 ベッドが8つ。

 奥に更に扉が見える。

 恐らく向こうにも部屋があるんだろう。

 そんな保健室で、早吹先輩は保険医がいるはずの椅子に足を組んで座っていた。

「今日は多分他のメンバーも来るから顔合わせしましょう」

「そう言えば、この部活何人いるんです?」

「七川含めて5人や」

 5人か。

 どんな人達だろうか。

「あ。昨日聞き忘れたんですけど、部活内容ってどんなんです?」

「ほいこれ」

『部活の概要』

 何やら堅苦しいタイトルだ。

『1.通学の際の発見した美しい風景や情景の撮影や写生』

『2.上記の展示と公開』

 絵も写真も自信無いんですけど。

『3.地域と密着したボランティアとコミュニケーション』

 ボランティア!?

 早吹先輩はともかく堺先輩がボランティアなんて想像できない。

 それにこの部活を作った意図が読めない。

 わざわざ部活でこんな事をするなんて……。

 ん。

 2枚目があるのか。

『以上は建前で――』

 建前!?

 ああ。

 でもこれなら何となく納得出来るか。

「おー。これが新入部員か」

「うわっ!?」

 突然背後から声をかけられて身体が跳ねる。

「あー。悪い悪い。驚かせちまったか」

 振り返るとそこには全身小麦色に焼かれたがたいのいい男が立っていた。

 目が細くちゃんと見えているのか不思議だ。

「いえ……。えっと、初めまして七川です」

「ああ。いろんな噂聞いてるよ」

「はうっ」

 俺は項垂れる。

 僅か数日で何処まで俺の噂は広がっているんだろう。

「はっはっは。男ならそれぐらいで落ち込むもんじゃないぜ」

 ばしばしと背中を叩かれた。

 なんとなく堺先輩と同じニオイがする。

「俺は堺英矢。なぎさの兄貴だ」

 やっぱり。

 これから先俺はどうなるんだろう。

 今まで以上に疲れるのか。

 俺は誰にも知れず心の中で一つ大きな溜息を吐いた……。


七川早月瀬本紀美

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2006/08/11(金)