二章.十五話
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「後は部長だけね……」

 早吹先輩は遠い目をして保健室の外を眺める。

「部長ってどんな人なんですか?」

「部長は独裁者や!」

「そう悪く言うなって。確かにその通りだけどな」

 英矢さん。

 それフォローになってません。

「それじゃ良くわからないですよ。具体的にどういう人なんです?」

「年寄り女子供だろうと容赦なく自分の利益のために使う男や」

「おい堺。何侵入部員に吹き込んでやがる」

「あ。部長」

「あ。部長じゃねぇ」

 部長は堺先輩をハリセンで叩く。

 堺先輩のハリセンの隠し場所を熟知しているらしい。

「部長それはセクハラやで!」

 え。

 一体何処に隠していたんですか。

 堺先輩は顔を紅くし俯いてモジモジしている。

 少し意外だ。

「あー。七川だったか。俺が部長の桐葉だ」

「初めまして。七川早月です」

 桐葉先輩はとても大人びた感じで高校生にはとても見えない。

「部長老けてるやろ? 部長は勿論3年やで」

「老けてるゆーな」

 桐葉再びハリセンを取り出し堺先輩を叩く。

 俺にはこの人が彼女たちの言うほど悪い人には見えない。

「だいたいな。人を悪人みたいにいいやがって。この部活で自由を得るための方法を俺に勧めたのは早吹だろ?」

「あらあ? 冗談のつもりで言ったんだけどな〜?」

「冗談で不倫現場の写真を進めるか?」

「覚えてないな〜」

 早吹先輩は実は相当の悪らしい。

 人は見かけによらない。

「まあいい。取りあえず俺、今日用事あるから適当にやってくれ」

「なんや部長。折角新入部員がはいったのにさみしなぁ」

「色々あるんだよ」

 その後も色々文句を垂れている堺先輩に背を向けてそそくさと出て行ってしまった。

「ま。いいわ。これでメンバーは顔は解ったでしょ?」

「まあ……」

 でも、顔合わせってそう言う意味じゃ無いと思う。

「じゃ、部長も用事あるみたいだし今日はもう解散するか」

「あ、はい。って、もうですか!?」

「だって部長がいないんじゃ話にならないもの」

 一体どんな部活なんだ。

 そう言えばまだ、部活内容が書かれた2枚目の紙を見ている途中だった。

「あれ、紙……」

 ふと辺りを見回すと部活内容の紙は愚か他のメンバーは誰一人いなくなっていた。

 あれ?

 この学校に入学してからいささか不思議体験できるのはなぜだろう。

 まあいいや。俺も帰るとするか。

 開かれた窓からまだ冷たい風が吹いた。

 俺はそれに背中を押されるようにして保健室を後にした・・・・・・。


七川早月瀬本紀美

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2006/11/29(水)