二章.十七話
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 ――もう慣れたけどさ。

 いつものように堺先輩によって部活に連れて来られたわけだけど。

「なんで屋外プール?」

「ん?屋内プールの方がよかったん?」

 そうですね。屋外じゃ部室って言えないですもんね。

「泳いでもええで?」

「いや、泳ぎません。何か色々浮いてるし。って、堺さん何水泳パンツまで用意しているんですか!」

「七川泳ぎたいと思って兄貴のパクってきたんに残念や」

 さすがに四月じゃ泳ぐ気もしない。

 プールの色怪しいし。

 絶対ヤゴとかい……。

「堺先輩……」

「なんや?」

「帰宅部って何なんですか?」

 俺たちのいるプールの逆サイドからバタフライでこちらに近づいてくる人影を見つけて帰りたくなった。

「帰宅部は帰宅部やって」

「あら? 七川君泳がないの?」

「早吹先輩!?」

 もの凄いスピードでこちらに泳いできた早吹先輩。

 でも何で早吹先輩?

「まあ、冗談はこれぐらいにして。七川君何か夢はある?」

 冗談!?

 そう言うキャラには見えなかったんだけどな。

 ていうか、唐突に夢って……。

「なんやないのか。夢のない男はモテへんで?」

「放っておいて下さい」

「じゃあ、仕方がないね。幼稚園の頃の夢でいいかな?」

 幼稚園の頃の夢ってなんだったっけ。

「ケーキ屋さんやね」

 そうだ、俺はケーキ屋さんに……。

「何で知ってるんですか!?」

「オペレーションリサーチや!」

 いや、意味解らないんですけど。

「もしもし。部長? ええ。ケーキ屋さんです」

 まって、今早吹先輩どこから携帯取り出しました?

 あなた水着じゃないですか!

「七川君。頑張りましょうね」

 いや、笑顔で頑張りましょうって。

「何をです?」

「ケーキ屋さん」

「はいー!?」

「あ、そうそう。ハンコ持ってきた?」

「いや、持ってきてないですよ」

 もう意味が解らない。

「じゃあ、血判ね」

「ちょっと左手出してみ」

「え? だから何をするんで……。痛っ! ちょ、堺先輩サバイバルナイフは……。何ですかその紙?」

「あ……」

 ちょ、堺先輩何失敗しちゃったって顔してるんですか?

 で、早吹先輩だからどこに予備の紙をしまって……。

「いだぁ! 堺先輩深い深い深い!」

「うるさいわ!! 男やったらがまんしーや!」

「……ごめんなさい」

 その後三十六回失敗して俺は失血多量で生死をさまよった。

 で、結局なんなのさ。

 俺の疑問は絶えなかった……。


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2007/01/07(日)