三章.十九話
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 ――夜。

 どうするのこれ?

 俺の両手には大量のケーキがぶら下がっている。

 勿論ケーキ屋修行で作ったケーキだ。

 ああ。紀美に全部食べて頂こう。

 大量に食べたせいで少しぐらい体型が変わるかも知れないが、いざ仕方なかろう。

 そう決めてマンションに入ると管理人を謎の女の子が散歩に連れて行くところだった。

「えーと。こんばんは」

「あ、七川さんこんばんは」

「いくら夜とはいえ、その、ちょっと管理人さんの格好はまずいんじゃないかな?」

 4月だというのに、管理人はブリーフしか身につけていない。

 にもかかわらず、大量の汗で既に水たまりが出来つつある。

「別に大丈夫。誰も僕のペットが人間だなんて思わないよ」

「ブリーフ履いてるペットって変だと思うけど……」

「そっか……」

 おお。

 やっと過ちに気づいてくれたか。

 まあ、ちょっと変わっているとはいえまだ子供。

 言えば解ってくれるんだな。

「脱ぎなさい。あなたにそんなもの必要ないでしょう?」

 はああああ?

 今、目付き変わった。

 この子一体何者なんだよ。

「てゆーか、脱ぐな!!」

 あっさりブリーフを脱ごうとしていた管理人の腹を蹴り上げる。

 つま先にその嫌な感触が残ったが脱がれてはたまらない。

「何をしているの? 脱ぎなさい」

「煽るな! そして脱ぐな!」

 前言撤回だ。

 この子は、子供なんかじゃない。

 目が、私は女王だと確固として語っている。

「あなた、自分のご主人様が誰だか忘れてしまったの?」

 さて、どうしたものか……。

 このままでは、彼女が脱げと命じて、俺が蹴り上げるの堂々巡りになる。

 ふと俺の手元に目を向ける。

「あ、ねえ。ケーキあるんだけど食べる?」

「え!?」

 お。

 効果ありか!

「ちょっと、学校で作り過ぎちゃって……」

「そ、そうなんだ」

「よかったら、いくつかどうです?」

 今にもよだれが口から溢れそうな彼女に大量のケーキが入った紙袋を差し出す。

「べ、別に欲しくなんか……」

「そっか。ならいいんだ」

「あ、あら。男のくせに諦めるのが早いんじゃない?」

「じゃあ、どうぞ」

「いらないっていってるじゃない!」

 どっちだよ!

 めんどくさいなあ。

「じゃあ、ここに置いていくんでペットにでも食べさせてやってください」

 ペット。もとい、管理人が俺に嫉妬のまなざしをひしひしと送ってくる。

 どうやら、ご主人様と俺のやりとりを快く思っていないらしい。

 俺は、とっととこの場を後にすることにした……。


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2007/01/15(月)